(3)蒸気の減圧による省エネルギー
前回蒸気表で、各蒸気圧力における蒸気のもつ潜熱・顕熱の重量当りの熱量を示しましたが、この【表】を使って蒸気節約の例を示します。
通常、小型ボイラーでは、蒸気圧力0.9〜1.0Mpa・Gの蒸気が発生するように燃焼管理されています。この程度の圧力制御が、経済的に管理できるからです。
また、めっき浴などを加熱する加熱管や熱交換器は、耐食性の高いチタンやニオブなどの稀少金属を使用することが多いため、少しでも薄い材料を使って使用量を減じ、製造原価を下げる工夫をしています。また、熱交換器の伝熱材料を薄くすることによって、伝熱効果を高めることもできます。
ここで、これら機器の耐圧の問題が生じます。薄い材料でできた加熱器に、高い蒸気圧力の蒸気を導入すると破裂してしまいます。これらの加熱器に、希望する熱量を伝熱するためには、蒸気圧力を低下させる必要があります。通常、表面処理に使われる加熱器の最高耐圧は、0.2Mpa・Gに規定されています。
このことが意外な省エネ効果を生んでいます。蒸気は顕熱と潜熱をもっていますが、顕熱は蒸気圧力が低下すると単位重量あたりの熱量も低下しますが、潜熱量は逆です。蒸気圧力の低下によって、熱量は増加します。具体的な例を【表1】で説明しましょう。
【表1】加熱における蒸気圧力低下の省エネ効果
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いま、この工場での一日の蒸気使用量を20トン/日とすると、ゲージ圧力0.9Mpa・Gの蒸気を、0.2Mpa・Gに減圧した効果は、
20ton×1000Kg×149.6KJ/Kg=2,992,000KJ
で、これは0.2Mpa・Gの蒸気
2,992,000KJ/2163.2KJ/Kg=1,383Kg
の節約になります。これは、毎日のことですから、大変大きな節約の効果です。