水素脆性を測定する方法として、次のような方法もあります。
(5)製品を用いての遅れ破壊試験
めっきした製品が、めっき工程中で吸蔵した水素により水素脆性破壊を起すか否か、また、ベーキング処理によって水素脆性が除去されたか否かなど、これらのことを最終的に確認するためには、実際の製品を用いて、遅れ破壊試験を行って確認しておくことが必要です。
このことは、破壊事故が起きた際の原因究明や、製品の設計や施工、使用状況など変更があった場合などでも必要です。
しかしこの問題は複雑で、遅れ破壊試験で問題がなかった場合でも完全とはいえない場合もありますが、問題解明のために確認試験は行う必要があります。
実際の製品を用いて遅れ破壊試験を行う方法は、水素脆性破壊現象の基本的な考え方を基に、個々の状況に見合った試験方法を工夫することです。水素脆性破壊は、吸蔵した水素の存在と、引張応力の集中した切り欠け部を起点に一気に破壊するので、この状況を再現するのが最良であります。
最も理想的な方法は、航空機関連部品に適用されている方法で、実製品の極限引張強さの、切り欠け部がある場合には75%、ない場合には90%の静荷重をかけて遅れ破壊試験を行い、200時間以内に破壊しなければ合格とする方法です。
デルタゲージを用いた評価方法を紹介しましょう。表面処理した試験片を水素脆性試験機のバイスに挟み、押し曲げ法で破壊が起こったバイスの走行距離の90〜95%の距離まで試験片を押し曲げて、そのままの状態で破壊の起こるまでの時間を測定します。結果は【表1】に示すとおりで、デルタゲージの示す脆化率と破壊との相関は明らかでした。
【表1】遅れ破壊試験の結果
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