水素脆性を測定する方法として、次のような方法もあります。
(4)ローレンス ゲージ(Lawrence Hydrogen Detection Gage)
ボーイング社の技師であったローレンス氏と高田氏の共同により開発された試験法で、めっき浴の管理、航空機ランデングギアーの洗浄剤、ペイント剥離剤などが、水素脆性に安全であるかどうかを試験するために開発されました。
測定の原理は、鉄の壁をもつ特殊な真空管をプローブとして使用し、水素原子が鉄の壁を通過して、真空管内に侵入する状態を検知する方法です。
鉄製のプローブを陰極として電気めっきを行い、その際に発生する水素原子が、めっき層および鉄の壁を通過して真空管内に侵入し、イオン化します。そこでイオン化した水素原子をイオン化ゲージIonization Gageでモニターし、レコーダーに記録するようになっています。
次にめっきの終ったプローブを乾燥した後、試験装置に付属している200℃のオーブン中に挿入してベーキング処理を行います。ベーキング処理により、めっき層および鉄の壁に吸蔵されていた水素原子が、急速に真空管内へ拡散移動します。
プローブの中にはバリウムがゲッターとして設置されており、移動してきた水素を一定の速度で吸収除去しますので、プローブの中の真空度は、ベーキングによる水素の放出速度の変化として捕らえることができます。この結果から、めっき層のベーキングによる水素の放出し易さが判断できます。
このように、この試験法は、めっき時の水素の侵入量と、ベーキング処理による水素の放出のし易さを測定することができます。
【図1】に、測定プローブの概念図を示します。めっき層に吸蔵された水素の量がどのようにして計測されるか説明しましょう。
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