所望のめっき厚を得るための、めっき条件を考えてみましょう。
(4)陰極電流密度の設定
めっきする製品に適用する陰極電流(A/dm2)をどの位にするかは、実験結果によります。通常電気めっき関係では、ハルセル試験という試験によって、光沢・平滑さ・皮膜厚さ・陰極電流効率などを陰極電流密度との関係において測定できますので、使用するめっき浴について、その結果を適用します。その値は通常、添加剤などのメーカーから推奨値が提供されています。
一例として光沢ニッケルめっき浴であれば、2〜5A/dm2が採用されているようです。
(5)バラツキを考慮しためっき厚の設定
いま10μmのニッケルめっき厚が要求されとします。製品の形状や通電方法などにより、製品の部位によって、めっき厚にバラツキを生じますので、所望のめっき厚は、10%増の11μmとします。(バラツキが小さい場合)
(6)めっき時間の設定
同じくニッケルめっきを例にとりますと、表1の諸係数に示したように、1アンペア・分/dm2の成膜速度は0.205μm/分ですから、11μmのめっきをするのに必要な時間は、電流密度を3A/dm2とすると、次式で求められます。
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【表1】各種金属めっき用諸係数
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(7)めっき時間の調整
以上のべたことは、すべて理想的な状態でめっき作業が行われ、陰極電流効率が100%の場合のことです。理想的にならない要因としては、通電の仕方が悪くて陽極金属や製品の各部位に電流が一様に流れない、槽内の場所によって、陽極の面積、浴温、浴組成が異なるなどが考えられます。いずれにしても電気量がめっき厚という仕事を左右する訳ですから、電流が均一に流れるようにすることが重要なポイントです。上記のめっき時間を陰極電流効率で除して、実際のめっき時間(分)を求めます。