(1)乾き度の高い蒸気を
ボイラーで発生した蒸気には、乾き飽和蒸気、湿り蒸気、過熱蒸気などがあることは先に述べました。このうち、表面処理工程で必要とされる蒸気は、蒸気表に示した乾き度100%の乾き飽和蒸気です。
しかし、通常、ボイラーの出口で乾き飽和蒸気を送りだしても、輸送の途中に熱損失がありますので、蒸気の乾き度は低下して(湿り度は増加)しまいます。蒸気の乾き度が低下すると、蒸気のもつ潜熱が低下して、加熱能力が低下することになります。
また、始業前など、熱需要が旺盛なときには、蒸気需要がボイラーの蒸気発生量を上回ることがあります。そんなときには、乾き度の低い、湿り蒸気が発生してしまいます。
いま、乾き度の相違による、蒸気のもつ潜熱量を【表1】で、比較してみましょう。
【表1】乾き度の相違による潜熱量の差(蒸気圧力0.2Mpa・G)
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このように、乾き度25%の蒸気は、乾き度100%の蒸気の25%しか潜熱をもっていません。良質の蒸気の4倍が必要です。このように乾き度は、潜熱量に重大な意味をもっています。
そこで、最近のボイラーは、乾き飽和蒸気を、排熱を利用した過熱器で更に過熱して、過熱蒸気をつくります。これを送気すれば、輸送途中で熱損失があっても、加熱蒸気の温度が低下するだけで、加熱時における凝縮潜熱に変化はありません。
また、前回のべたように、ボイラー出口の蒸気を減圧することによって、絞りによる過熱で、乾き度を上昇させる効果があります。
このように重要な、蒸気の乾き度は、【図1】に示す「絞り熱量計」を使って測定することができます。図のように、穴のあいた管を蒸気管にさし込み、絞り部を通った後の蒸気温度と圧力を知れば、蒸気表によって熱量が分かりますので、乾き度Xを知ることができます。このように、蒸気の輸送は、乾き度の点からみても、蒸気配管の保温は極めて重要です。
通常、蒸気配管の保温には、グラスウールの保温管が使われますが、保温層が厚いほど保温効果はありますが、コストは上昇します。そこで保温コストと保温効果の妥協点として25〜100mm厚さの保温材が用いられています。当然のことですが、配管の熱損失をゼロにはできませんので、管内で発生したドレンの排除も重要です。