精密部品への無電解ニッケルめっき | 技術情報

　工業的に最も利用されている代表的な無電解めっきは、無電解ニッケル・りん（5-13%）合金めっきです。複雑な形状に対しても均一な膜厚が得られることや、機械的・電気的・物理的特性が優れていることが評価されて、需要は増大しています。
　表に、無電解ニッケル・りん合金めっきの適用例とその目的を示します。

【表】無電解ニッケル・りん合金めっきの適用例とその目的

産業分野	適用部品	目的
自動車工業	ブレーキ、ピストン、シリンダー、歯車、軸受け、回転軸、カム、弁など	硬度、耐磨耗性、焼き付け防止、耐食性、精度など
電子工業	接点、シャフト、ばね、ボルト、ナット、マグネット、抵抗体、ステム、ハウジング、コンピュータ部品、電子部品など	硬度、精度、耐食性、はんだ付け性、ろう付け性、溶接性、電磁波シールド性など
精密工業	複写機、光学機器、時計など	精度、硬度、耐食性など
航空・船舶	水圧系機器、電気系機器、スクリュー、エンジン、弁、配管など	耐食性、汚染防止、酸化防止、耐磨耗性、精度など
化学工業	各種バルブ、ポンプ、配管内部、反応槽、熱交換器など	耐食性、汚染防止、酸化防止、耐磨耗性、精度など
その他	各種金型、工作機械部品、真空機器部品、繊維機械部品など	硬度、耐磨耗性、離型性、精度など

　無電解ニッケルめっきの特徴として、めっき後、熱処理することによって硬度が上昇することがあげられます。めっき直後Hv500〜550の硬度が、400℃で熱処理するとHv800〜1000になります。
　また、無電解ニッケルめっきは殆どの金属、プラスチックス、セラミックスなどに実施することが可能ですが、錫、鉛、亜鉛、カドミウム、アンチモン等にはめっきできません。これらは金属析出時の触媒作用を妨害するからです。
　無電解ニッケルめっきはこの他に、ニッケル・ホウ素（ボロン1%）合金めっきがあります。これはNi-Pめっきよりも高価ですが、はんだ付け性や耐熱性が格段に優れていますので、電子部品に用いられています。