[2024/2/9公開]
Question
アルミニウム合金の種類により、どのような切削工具が適しているか教えて
アルミニウム合金の切削加工を検討していますが、合金の種類によって切削工具を変えた方がいいと聞きます。どのようなアルミニウム合金には、どのような切削工具がいいのか教えてください。
Answer
アルミニウム合金の切削加工を考える時は、3種類に大別して切削工具を使い分けます
アルミニウム合金ということでひとくくりにして加工すると、特性の違いによって思わぬトラブルになります。アルミニウム合金を3種類に大別して、それぞれに適した工具を使い分けることで、トラブルを回避することができます。それぞれの特長と工具選定のポイントを、以下に記載していますのでご参照ください。
大別項目 | 推奨適用切削工具 | |
---|---|---|
1 | アルミニウム合金展伸材(圧延アルミ) A1000(純アルミ系)、A2017(ジュラルミン)、A2024(超ジュラルミン)、A7075(超々ジュラルミン)など |
ノンコート超硬、DLCコート超硬 |
2 | アルミニウム合金鋳物・ダイカスト(アルミ鋳物) 鋳物:AC1A、AC7A、AC4A ダイカスト:ADC1、ADC5、ADC10など |
DLCコート超硬、ダイヤコート超硬 |
3 | 難削のアルミニウム合金 鋳物・ダイカストのうちハイシリコンアルミ:AC9A、ADC14など |
ダイヤコート超硬、PCD |
- アルミニウム合金展伸材(圧延アルミ)
A2017、A2025(超ジュラルミン)、A5052、A7075(超々ジュラルミン)に代表される軟らかくて切りくずが繋がる被削材です。ただしA7075などS45Cと同程度の強度を持つものもあり、工具寿命が短くなることがあります。Aの後の4桁数字で種類が変わりますが、いずれも切れ味を重視した工具の選択が必要です。軟らかいがゆえに、溶着のトラブルが起こりやすいため、溶着防止効果と薄膜で切れ味を保つことができるDLCコーティングの工具がより良い工具選定と言えます。 - アルミニウム合金鋳物・ダイカスト(アルミ鋳物)
AC4C、ADC12に代表される、軟らかいが、切りくずは繋がらず細かくなる被削材です。特にADC12にはSi(ケイ素/シリコン)が多く含まれるため、工具の摩耗が進行しやすいという欠点があります。そのため切れ味に加えて耐摩耗性が重要になります。アルミニウム展伸材と同様に切れ味を重視した工具を選定ください。加えて溶着防止と工具摩耗を考慮して、DLCコーティングもしくはダイヤモンドコーティングを選定することも有効です。切りくずが細かくなることからタップはハンドタップ形状の「ダイカスト用タップ」をご用意しています。 - 難削のアルミニウム合金
1つはAC9AやADC14などハイシリコンアルミと呼ばれる、ケイ素(シリコン)の含有量が高い被削材です。ケイ素含有率が14~16%を超える被削材は、工具が非常に早く摩耗してしまうため、ダイヤモンドコーティングやPCD工具の選定が必須と言えます。もう1つは、アルミニウム青銅です(JISでは銅合金に分類されています)。「アルミニウム」と「銅」ですから軟らかそうなイメージをしてしまいそうですが、硬度が高いため調質鋼用の工具の選定が必要です。
技術情報提供:オーエスジー株式会社