[2023/10/16公開]
Question
耐食性が高く、クリーン環境で使用できるクランプ部品はありますか?
- クリーン環境での使用が想定されるため、耐食性の高いクランプ部品が必要だ。
- 錆に強いクランプ部品を使用したい。
Answer
ステンレス(SUS)製のクランプ部品を使ってみましょう。
ステンレス(SUS)製のクランプ部品
ステンレス(SUS)は耐食性が高いため、錆に強いという特長があります。
汚れを嫌うクリーン環境では防錆が必須です。
錆は一度発生するとそこから広がり、やがて製品は腐食しボロボロと崩れて製品に付着してしまう可能性があります。
錆の対策としては、アルマイト処理を施したアルミなど、塗装による防錆処理も挙げられますが、表面処理の場合は剥がれ落ちてしまう可能性もあるため、半導体関連など工場によってはステンレス(SUS)製品の使用が指定されている場合があります。
鋼材製品とステンレス(SUS)製品の比較
ステンレス(SUS)は錆びにくく、クリーン環境でも使用可能ということはよく聞きますが、実際のところ、SC材やSCM材と比べて、ステンレス(SUS)材はどれくらい錆びにくいのでしょうか。
複数年放置したクランプ部品の外観を比較してみました。
【防錆性能の実証】
一般的な鉄材質のクランプ部品
ところどころ赤錆になってしまっている
ステンレス(SUS)製のクランプ部品
汚れはあるもののの、錆はほとんど見られない
鉄材質のクランプ部品は、黒染め処理していても赤錆が発生しています。
一方でステンレス(SUS)製のクランプ部品は、多少の汚れはあるものの錆は見られず、経年による錆への耐食性能を確認することができました。
錆が発生する原因
では、一般的なクランプ部品などの鉄製品はどうして錆びてしまうのでしょうか。
錆が発生する仕組を見てみましょう。
防錆処理を行っていない鉄製品の表面に水が触れると、水分中に少量の鉄イオンが溶け出ます。
ここに空気中の酸素が触れると、化学反応を起こして、鉄が酸化してしまいます。
この酸化してしまった鉄(酸化鉄や水酸化第二鉄)が、いわゆる「赤錆」というものです。
赤錆は鉄製品にとっては害で、外観を損なうだけでなく、形状の劣化も引き起こしてしまいます。
クランプ部品が錆びてしまうと、形状劣化による精度不良を引き起こしたり、クランプ強度低下によりユーザーの安全を脅かしたりするリスクが発生します。
ステンレス(SUS)が錆に強い理由
クリーン環境など、錆を嫌う場所ではしばしばステンレス(SUS)材質の部材が用いられるように、ステンレス(SUS)材質は「錆びにくい」という長所があります。
ステンレス(SUS)は金属であるにも関わらず、いったいなぜ錆に強いのでしょうか。
その理由は、ステンレス(SUS)の成分にあります。
ステンレス(SUS)とは合金で、鉄を主成分としながら、クロムやニッケルなどで構成されています。
ステンレス(SUS)に含まれるクロムは酸素と結びつきやすい特性があります。
そのため、鉄よりも先に酸化が進んでいきます。
クロムと酸素が結びつくと膜を形成し、やがてステンレス(SUS)表面全体を覆い尽くします。
この膜が酸素と鉄の接触を防ぎ、錆の発生を防いでくれるのです。
ステンレス(SUS)製品はその錆びにくさから、クリーン環境のみでなく、食品機械など、汚れを嫌う場所での使用が可能となっています。
最近の食品業界でのHACCPの導入義務化、半導体市場の動きの活発化を鑑みると、ステンレス(SUS)製品の需要は今後益々大きくなると想定されています。
また、一般的なクランプ部品の代わりに使用し、クーラント対策として錆を防ぐこともできます。
安価で取り組むことができるだけでなく、製品寿命も長いため、クランプ部品費用のトータル的なコストダウンを図ることもできます。
出典:株式会社ナベヤ