[2023/7/3公開]
Question
エンドミル加工に使う保持具を教えて
エンドミル加工に使う保持具は色々と種類があるようですが、選定方法や特徴を教えてもらえますか?
Answer
エンドミルなど回転工具は保持具(ツーリングとも呼ばれます)で保持され適用されます。
この保持具を選定するには、1.テーパ部 2.保持方式 3.保持具の首下長さ 4.把握径(工具のシャンク径)を決めてから選定します
1.テーパ部
工作機械のシャンク規格についてはこちらをご参照ください。
2.保持方式
回転工具を保持する保持具には、保持方式で多くの種類があり、一般的には、①コレットチャック方式、②油圧(ハイドロ)チャック方式、③焼きばめチャック方式があります。
詳しくはこちら。
3.保持具の首下長さ
保持具の首下長さはワーク、取り付け具などの状況で判断します。必要以上に長くすると振動の原因となりますのでご注意ください。
4.把握径(工具のシャンク径)
把握径は切削工具のシャンク径より選定しますが、コレットホルダなど1つのツーリングでコレットを交換することで多種のシャンク径に対応するものもあります。
チャック部の把持構造と特徴
①コレットチャック方式
(a)保持構造
チャックのヘッド(ストレートコレットチャックの場合)またはコレットナット(テーパーコレットチャックの場合)を回すことで、内側に挿入したコレット外周に圧力が加わり、コレットの内径が狭まり切削工具を保持します。
(b)利点と注意点
異なる内径のコレットを用意することで、さまざまなサイズの工具径を容易に脱着できます。
テーパーコレットはテーパー角度など、専用コレットを使用する場合がありますので確認が必要です。
仕上げ切削などで高速回転(工具のシャンク径で異なりますが、例えば毎分2万回転数以上)で用いる場合は遠心力で保持力が低下する場合があります。
②油圧(ハイドロ)チャック方式
(a)保持構造
油を介してチェック部内径に圧力を加え切削工具を保持します。
(b)利点と注意点
油を加圧するネジ構造部のネジを回転して脱着は容易、かつ強固に精度よく保持できます。
保持するシャンク径毎にチャックを選定します。
コレットチャック方式に比べ高い保持精度を有しますが、工具回転時の遠心力、切削熱の影響に留意することも必要です。
③焼きばめチャック方式
(a)保持構造
金属の熱膨張、収縮特性を利用して、加熱して工具シャンク部を挿入、冷却・収縮で保持する方式です。
(b)利点と注意点
工具高速回転時の保持剛性と触れ精度が最も高い保持方式です。
工具シャンク部分はスリム化でき、ワークへの接近性に優れています。
工具保持に加熱冷却装置が必要になりますが、繰り返し保持剛性と振れ精度の高い自動着脱が可能です。
注意点として熱変位を利用するので、膨張率の近いハイス鋼の適用は難しく、超硬合金向けが中心になります。
④サイドロック方式
チャック部の側面からネジ止め固定します。高剛性の保持ながら、振れ精度は低い評価です。
この方式は、工具シャンク部にネジで固定するフラット面を設ける必要があります。
⑤3つ爪ドリルチャック
保持力が弱く主に小径ドリル加工用です
保持具別メリット・デメリット表
工具保持方法 | コスト | 耐久性 | 保持精度 | メンテナンス し易さ |
取付易さ |
---|---|---|---|---|---|
コレット式 | ○ | ✕ | ✕ | ✕ | △ |
油圧式 | △ | △ | △ | △ | ○ |
焼嵌め式 | ✕ | ○ | ○ | △ | ✕ |