非円形歯車は、カムの駆動制御特性と円形歯車の持つ重負荷の条件でも正確に駆動伝達できる特性を持っていますが、歯形形状の設計など一般的でない面があります。ここでは、簡便な設計の進め方を紹介します。
(1)1対の非円形歯車の基本
【図1】に非円形歯車の組合せ例をしめしましたが、次の特徴があります。
- ピニオン側非円形歯車の回転軸中心とギヤ側非円形歯車の回転中心を結んだピッチ半径の合計(中心距離)は全周一定
- ピッチ半径の長さの比で速度変動を設計する
(2)非円形歯車の設計
非円形歯車の設計は、速度線図や加速度線図を用いて形状設計は可能ですが、歯数その他に次のような設計緒元の算出が必要です。詳細は『非円形歯車の設計・製作と応用 香取英男/著 日刊工業新聞社』を参照ください。
■非円形歯車の緒元
- 中心距離
- 歯数
- ピッチ曲線半径
- ピッチ曲線曲率半径
- かみ合い圧力角
- 切下げ評価値
(3)非円形歯車の簡易製作
簡易な製作法は、サッカーのフリーキックなどのセットプレーの練習と似た進め方で、動きの基本を決めた後に微調整をしながら完成させます。即ち、制御したいLCA(ローコストオートメーション)機構の作用点の動きを歯車屋さんに説明し、両者で作り込んでゆきます。
(4)応用例
■等速運動領域の利用
- 長いラインに溶剤を一方向から定量塗布し、短時間に戻す印刷工程
- 工具がワークにあたるまでのムダ時間を高速で短縮させ、加工中は低速の等速度制御
■不等速運動領域の利用
- 曲げや打ち抜き加工は高速動作させ、戻りストロークは低速で戻す反復動作
(5)ローコスト化の実際
ローコスト化および短納期化は、使用する機構部品を個別に設計製作せずに標準部品を利用することです。非円形歯車とリンクのコンビネーション機構の場合、【図2】の例から、2部品の非円形歯車以外はミスミのFA標準部品を利用することで、ローコスト化と短納期化が可能です。