基礎シリーズ第5弾。てこの原理で地球も動かせる?倍力機構の概要&てこ、トグル、クランク機構を用いた使用事例をご紹介
今月の特集では、倍力機構の定義、倍力機構に使われている機構と例を分かりやすくご説明いたします。
最後には、地球を動かせるために必要なてこの長さを計算した結果も公開していますので、ぜひご一読ください!
倍力機構とは?
倍力機構とは、モーメント(力 × 距離)が釣り合うことを応用し、小さな力で大きな力の作用が得られる機構のことを言います。
倍力機構は、リンク、てこ、スクリュー、くさび、ギア、滑車などの機械要素に使われています。
倍力機構① てこ
Copyright © Wikipedia
てこは、棒と支点で構成された装置で、大きなものを小さい力で動かすため、または小さな運動を大きな運動に変えるために使われるものです。
てこの構成要素
てこは、支点・力点・作用点の3つで構成されています。
- 1. 支点(The fulcrum)
- : てこを支える
- 2. 力点(The post of effort)
- : 外部の力がてこに加わる点
- 3. 作用点(The point of load)
- : 力が作用する点
てこのメカニズム
てこの原理で最も重要なのは、
力点でのモーメント(力点に加える力 × 支点から力点までの距離)と
作用点でのモーメント(作用点で得られる力 × 支点から作用点までの距離)が同じであるということです。
つまり、力のモーメントが釣り合っているということになります。
よって、作用点と支点の間を短くすることで、力点に加えた力よりも大きな力を作用点に与えることができます。
てこを使った倍力道具は、つめきり・くぎ抜き・蛇口の取っ手などがあり、日常生活でも広く使われています。
図1 シーソー型倍力メカニズム
ミニコラム 経済での倍力効果: レバレッジ
小さい力で大きい力の作用が得られる倍力効果。その倍力効果が経済分野でも応用されています。
それが、「レバレッジ」効果です。
レバレッジ(Leverage、てこ)とは、経済活動において、他人資本を使うことで自己資本に対する利益率を高めることを意味します。
もちろん、他人資本を使うと利払いが発生しますが、利子は利益とは関係ない一定の金額であるため、利益が多くなればなるほど収益が増し、利益も増えることになります。
例を挙げて説明いたします。
年間投入資本が100円、年間利益が20円と同じ場合を想定して、それぞれの自己資本利益率をみてみましょう。
- 自己資本100円の場合の自己資本利益率(20円/100円)*100 = 20%
- 自己資本50円 + 年間10%の利子で借りた他人資本50円 = (20円/50円)*100 = 40%, 利払い5円を考慮すると、15円/50円 = 30%
同じ100円の資本を保有しているとき、Aは20円、Bは30円の利益が発生し、Aより10円の追加利益が得られるということになります。
このように、他人資本を用いることで、同額の自己資本でもより高い利益率が得られる効果を、レバレッジ効果と呼びます。
借入金などの金利費用よりも高い収益が期待されるときは、レバレッジ効果を利用して、利益率を上げることができるでしょう。
しかし、レバレッジ効果は変動性を高めているため、損失が発生した場合の損失の割合も大きくなるということも充分認識しなければなりません。
最近は、不況の影響で、自己資本のうち投資する割合を低くすることで、自己資本に対する利益変動性を低下させ、安全性を高める逆レバレッジ効果も広く使われています。