送りねじは、回転運動を直線運動に変えたり、大きな力を発生させるために使用する機構要素です。送りねじの種類と求められる性能は、次の内容です。
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ボールねじの運転性能
ボールねじの運転性能の特徴は、摩擦抵抗が極めて小さい送りねじ性能です。これは転がり軸受と同じように、鋼球の転動運動で力を伝達させる構造によります。
静摩擦トルク
- 静摩擦トルクとは、直線運動のときの静摩擦抵抗に対して、回転運動のときに静摩擦トルクとなるものです。
- ボールねじの静摩擦トルクは、送りねじ軸が回転を始める最初のタイミングに、鋼球がねじ溝上を転動せずにわずかに"すべる"挙動から生じると考えられています。
- この静摩擦トルクを生じさせる鋼球とねじ溝のすべり摩擦が、ボールねじの摩耗の大きな要因となっています。
- 静摩擦トルクは、ねじ軸の回転方向(正転、逆転)で異なります。
- また、ナット内部の鋼球循環路の位置(下側配位、上側配位など)によっても異なってきます。
動摩擦トルク
- 直線運動の動摩擦抵抗に対して回転運動の動摩擦トルクです。
- 運動状態の摩擦抵抗に当たるもので、鋼球サイズとねじ溝サイズの関係で生じる予圧の大きさや、潤滑油の特性などの影響を受けます。
- ねじ軸の回転数に応じて動摩擦トルクも変動します。
- オーバーサイズの鋼球の場合、オーバーサイズ量により急激に動摩擦トルクは増大します。(【図1】参照)
- シングルナットに対してダブルナットの場合は、鋼球数の多さや接触ねじ溝長さの増大による平均化効果により、動摩擦トルクの変動が抑制されます(【図1】b)参照)。
摩擦トルクの変動
- 摩擦トルクの変動はモーターの速度変動に影響を与えるため、直線運動の速度ムラや位置決め精度の変動の要因となります。
- JIS B 1192-3(2018)にトルク変動率が規定されています。
■例
基準トルクが0.2〜0.4N・mの範囲で、ねじ部有効長さが4000mm以下、細長比40以下のC3等級ボールねじのトルク変動率は±40%と規定されています。