ローコストでハイパフォーマンスな機構を製作するためには、「はめあい設計」に強くなることが望まれます。ここ以降では、機械設計エンジニアでもとっつきにくい「はめあい設計」について、LCA(ローコストオートメーション)との関係を主に解説します。
(1)「はめあい」とは
2個の機構部品は、次の3つの関係でなりたっています。
- 固定・・・・・・・・・・・・例:固定ピンの圧入
- 位置決め・・・・・・・・・・例:治具の位置決め
- 案内(回転、しゅう動)・・・例:ベアリング挿入穴
上記の3つの場合の2個の機構部品のはまりあう寸法関係を「はめあい」といいます。
(2)「はめあい」の生い立ち
「はめあい」の狙いは、機能上差し支えない範囲に2部品の寸法関係の許容限界を取り決めることで、過剰品質とせずに互換性を持たせることができる設計値を示すことです。
このコストパフォーマンスを伴う互換性の部品寸法設計の考えは、米国の銃の生産段階で生まれたものといわれています。米国開拓の時代に、重たく部品の互換性のないヨーロッパ製の銃では、現地インディアンの軽装武器(弓矢と馬など)に対抗できなかったために、小型で軽量で部品の互換性があり大量生産が可能な銃が必要とされました。この背景から、高精度部品で、かつ部品交換が可能な機構部品(銃)の生産が研究され「はめあい」設計の思想と互換式生産方式が生まれました。19世紀中頃です。
この互換性設計思想は、その後の大量生産の時代になるにつれて標準化に繋がっていきます。
(3)「はめあい」設計とLCA
「はめあい」は2部品の関係を適切に実現させるためのルールと考えられます。
■適切とは
- 固定ピンでシックリと確実に固定する
- 冶具を固定ピンでガタなく位置決めする
- ベアリング外径を適度なしまりばめで固定しスムーズに回転できる
定性的な表現で2個の部品の関係が表現できますが、この関係を設計図面として数値表現することが「はめあい」設計です。LCAは最大のコストパフォーマンスを機械に求める考えですので、「はめあい」設計が重要と成ります。