固体と固体が接触して動く時には摩擦力が生じます。この摩擦力は潤滑油などで適切に処置しないと、次のようなトラブルに繋がります。
- 固体と固体の摩擦により焼き付きを生じる。
- 磨耗を生じ、だんだん磨耗が激しくなる。
- 動力損失が大きくなる。
したがって、摩擦・磨耗をうまく制御することが重要です。
(1)摩擦について
摩擦の種類は次の2つがあります。
a)すべり摩擦
b)転がり摩擦
すべり摩擦は、平面拘束案内やスキー、そり等に生じる摩擦の形態です。【図】は古代エジプトの壁画です。大きな石像をそりで運搬している様子です。中央の1人がそりの前方に油をたらし、摩擦力を小さくしているのが解ります。
色々な材料の組み合わせの摩擦係数を示します。
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転がり摩擦は、リニアモーション(LM)ガイドやミニチュアボールガイド等、球やコロを転動させるときに生じる摩擦の形態です。すべり摩擦を「そりの時代」とするなら、転がり摩擦は転動して移動する「荷車の時代」といえるでしょう。
転がり摩擦係数の例を示します。(すべり摩擦と転がり摩擦の両者の摩擦係数は、同一に比較はできません。)
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(2)磨耗について
固体と固体の間に潤滑油などがなく直接接触している場合では、接触している微小な部分で材料同士が結合状態にあります。しゅう動によりこの結合を引き剥がすため、しゅう動抵抗が生じます。これが摩擦抵抗(力)です。この結合した微小な部分は、一方の固体から微小片が剥ぎ取られます。これが磨耗です。摩擦力が大きくなるとは、単純には磨耗が激しくなることです。
磨耗を防ぐには、適切な潤滑処理が必要です。したがって、しゅう動案内でも潤滑剤(各種グリス)の選定が重要で、特に高速で動く機構やクリーンルームで使うLCA(ローコストオートメーション)用しゅう動案内では潤滑剤の選定が勘所です。