直動案内は、移載・搬送・位置決め・組立などの自動化における運動要素のなかで最も多用されるものです。ここでは、[1] リニアブシュ、[2] リニアガイド、[3] 無給油ブシュの3種類の直動案内を比較解説しながら、リニアブシュの使いこなし法を解説します。
(1)直動軸受の特徴比較
3種類の直動案内の特徴を大胆に比較すると、次表となります。
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以下では、この特徴と構造上の関連を解説します。
(2)直動案内の特徴と構造の関連について
(1)耐荷重特性の性能差について
■リニアブシュと無給油ブシュ
a) | リニアブシュまたは無給油ブシュが組込まれた可動ユニットは両端支持構造のシャフト(レール)に乗った状態で運動するため、大きな荷重の場合はシャフトが変形してしまう(【写真1】)。 (なお、垂直方向の直動案内のときは、シャフトは可動ユニットの荷重を支える必要がないため、耐荷重問題は無視できシンプルな機構が採用できる。) |
■リニアガイド
b) | ベース板に固定されたレール上を可動ユニットは運動するため耐荷重特性に優れる(【写真2】) |
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(2)摩擦係数の性能差について
これは案内の摺動方法の違い(転がり軸受かすべり軸受)による性能差です。この摩擦係数の違いは、駆動アクチュエータの選定に直接関係してきます。
a) | 摩擦抵抗が小さい=摩擦力が小さい=小さな回転トルクのモータで駆動可能=回転を直動に変換 | |
b) | 摩擦抵抗が大きい=摩擦力が大きい=大きな回転トルクまたは推力を要す=直動シリンダで直に推す |
■使用上の注意点
1. | 摩擦係数の大きさはアクチュエータの容量と運動時の発熱に影響を与えます。無給油ブシュは発熱のため連続の高速運転には不適切です。 | |
2. | エアーシリンダ採用の場合、モータのように初動/停止時の速度制御ができないために、衝撃吸収ダンパ等でソフトに停止させる機構を設置し、高速化と振動抑制を実現させます。 |
(3)案内精度の性能差について
これは軸受とレールのクリアランスの関係で、ほぼ決まる性能です。
a) | リニアブシュは円筒形状のシャフトをレールとし、軸受とレールのクリアランスは、「すきまばめ:g6」か「中間ばめ:h5」を採用するため、わずかな「ガタ」を持った状態で摺動します。 | |
b) | リニアガイドは専用レールを採用し、微すきまタイプ(0〜3μm)と与圧タイプ(-3〜0μm)のように高精度な軸受とレールをペアで使用します。 | |
c) | 無給油ブシュは、リニアブシュよりも大きなクリアランスのレール(シャフト)を採用するため、案内精度は劣ります。 |
■使用上の注意点
リニアブシュとリニアガイドでは、ベアリングと軸受の接触状態が異なります。リニアブシュは点接触状態のため、接触部には局部的に大きな荷重がかかる。リニアガイドはベアリングの球形状に合った凹状溝をレールとするため面接触状態。そのため、接触部では荷重は分散された状態になる。摺動部の接触状態でも両者には耐荷重特性上の性能差がある(【図1】【図2】)。
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(4)耐環境特性とメンテナンス性について
この性能差は構成材料の差によるもの。
a) | リニアブシュとリニアガイドは潤滑油(グリス)の効果で長期間の信頼性を作り出しているため、潤滑油の耐環境性能を超えた環境では使用できません。 | |
b) | 無給油ブシュは、潤滑油なしでも性能が得られるため耐環境性とメンテナンス性に関して対応力が高い。 |