環境保全
- (1)自然冷気の活用 アルミニウムの陽極酸化処理工場など、電解浴の冷却装置と「冷水貯槽」を有する工場では、冬季の外気温度を利用して冷水をつくることができます。 冬季の外気温度は、地域によって異なりますから、この方法が採用できない地域もありますが、寒くなるところであれば、採用は可能です。 自然冷気の活用システムを【図1】に示します。このシステムの基本は、冷水貯槽の冷水を、クーリングタワーを使って自然冷気で冷却することでありますが、特別な装置の増設は必要ありません。冷凍機の蒸発器側の冷水ポンプの出口を、クーリングタワーに接続して、直接大気で冷却する回路を設ければよいのです。 運転時間は、外気温度と冷却負荷と冷水貯槽容量との関係によりますが、小規模工場では、厳寒期には、冷凍電力は殆ど不要になります。また、外気温度の最も低い、夜間や朝方の運転によって効率よく冷水が得られますし、凍結防止対策にもなり一石二鳥です。タグ:環境保全,
- (2)ヒートポンプの活用例 陰極(または陽極)電流効率の低いクロムめっき、亜鉛めっきやアルミニウムの陽極酸化処理のように、ジュール熱によって発熱し、浴温維持のために冷却を必要とする表面処理工程では、一方において脱脂、エッチング、湯洗、封孔、乾燥など、加熱を必要とする工程があります。 従って、これら両者の熱需要を上手にマッチングさせれば、冷却で得た熱を加熱に利用することが可能になり、大幅な加熱用電力や燃料の節約になります。 しかし実際の工場では、熱需要に時間差があります。例えば、めっき工程では、一番最初に必要な熱は、脱脂浴などめっき前処理浴の加熱です。この時点ではめっき作業は行われておらず、ジュール熱は発生していませんから「加熱用熱源」が別に必要です。 ヒートポンプを採用した場合、熱需要のマッチングに使われているのが、一般には、ある容量をもった「温水貯槽」です。これで、冷却と加熱の熱需要の時間差を調整することができます。早朝の脱脂浴加熱用熱源は、昨日から貯蔵されている温水貯槽の温水によって賄うことができます。 ヒートポンプ採用による省熱対策例を【図1】に示しました。タグ:環境保全,
- (1)ヒートポンプの原理 クロムめっきやアルミニウムの陽極酸化処理のように、溶液の電気分解を伴う表面処理工程では、電流効率が低いため、皮膜生成を伴わない電力は、ジュール熱となって発熱し、浴温を上昇させます。 従って、浴温を一定に保つためには、電解浴を冷却することが必要です。従来は冷凍機を使ってチル水(冷水)をつくり、それを熱交換器に循環して、電解浴を冷却しておりました。この場合、ジュール熱は、冷凍機のコンデンサーからクーリング・タワーを通じて大気中に放散されていました。 この捨てていた熱は、温度が低くて利用価値がありませんでしたが、低温水から高温水が得られるヒートポンプを使用することによって、この廃熱を再利用することができるようになりました。タグ:環境保全,
- (1)金属の比熱 水を使う湿式の表面処理工程での熱収支を考えてみましょう。いま、次に示すようなめっき工程について、複雑なことを除いて単純に考えてみます。 めっき処理の条件は、室温20℃、アルカリ脱脂浴温55℃、電解脱脂浴温55℃、ニッケルめっき浴温60℃、水洗温度20℃、酸洗浴温20℃、処理金属:黄銅素地、処理量:3000Kg/日とします。 この工程における熱の動きを考えてみますと、20℃黄銅素地の製品3000Kgが、アルカリ脱脂で消費する熱量は、次式で示されます。タグ:環境保全,
- (3)フロート材による省熱対策 前回、常に開放されている液面であり、且つ、強制蒸発の効果の高い局所排気装置の設置された浴槽での熱損失防止対策の、ミスト防止剤の使用による省熱対策を紹介しましたが、今回は、液面にフロート材(浮き)を浮かべることによる省熱対策をお話します。 耐食性に優れ、処理液よりも軽いフロート材を、液面に浮かべて、液面と空気が接触するのを遮断して、水の蒸発やミストの飛散を防止する方法であります。タグ:環境保全,
- (2)ミスト防止剤による省熱対策 常に開放されている液面であり、且つ、強制蒸発の効果の高い局所排気装置の設置された浴槽での熱損失防止対策には、次の二つが行われています。タグ:環境保全,
- (1)液面からの熱損失 表面処理工程の特徴は、各種処理浴の液面を、製品の処理のために、常に開放しておく必要があることです。保温や保冷のために、頑丈なフタをしてしまえば熱損失は防止できますが、仕事はできません。 前回、処理槽の槽璧や槽底部の保温・保冷対策についてお話しました。これらの対策は、現在の実用上の技術や資材の提供から、これ以外の方法は見当たりません。ましてや、槽類の多くは、一度設置すれば簡単に移動できないものばかりです(【図1】)。タグ:環境保全,
- (1)乾き度の高い蒸気を ボイラーで発生した蒸気には、乾き飽和蒸気、湿り蒸気、過熱蒸気などがあることは先に述べました。このうち、表面処理工程で必要とされる蒸気は、蒸気表に示した乾き度100%の乾き飽和蒸気です。 しかし、通常、ボイラーの出口で乾き飽和蒸気を送りだしても、輸送の途中に熱損失がありますので、蒸気の乾き度は低下して(湿り度は増加)しまいます。蒸気の乾き度が低下すると、蒸気のもつ潜熱が低下して、加熱能力が低下することになります。 また、始業前など、熱需要が旺盛なときには、蒸気需要がボイラーの蒸気発生量を上回ることがあります。そんなときには、乾き度の低い、湿り蒸気が発生してしまいます。 いま、乾き度の相違による、蒸気のもつ潜熱量を【表1】で、比較してみましょう。タグ:環境保全,
- (3)蒸気の減圧による省エネルギー 前回蒸気表で、各蒸気圧力における蒸気のもつ潜熱・顕熱の重量当りの熱量を示しましたが、この【表】を使って蒸気節約の例を示します。 通常、小型ボイラーでは、蒸気圧力0.9〜1.0Mpa・Gの蒸気が発生するように燃焼管理されています。この程度の圧力制御が、経済的に管理できるからです。 また、めっき浴などを加熱する加熱管や熱交換器は、耐食性の高いチタンやニオブなどの稀少金属を使用することが多いため、少しでも薄い材料を使って使用量を減じ、製造原価を下げる工夫をしています。また、熱交換器の伝熱材料を薄くすることによって、伝熱効果を高めることもできます。 ここで、これら機器の耐圧の問題が生じます。薄い材料でできた加熱器に、高い蒸気圧力の蒸気を導入すると破裂してしまいます。これらの加熱器に、希望する熱量を伝熱するためには、蒸気圧力を低下させる必要があります。通常、表面処理に使われる加熱器の最高耐圧は、0.2Mpa・Gに規定されています。タグ:環境保全,
- (2)蒸気の持つ熱量 それでは、蒸気は具体的にどのくらいの熱量をもっているのでしょうか。これを示したものに「蒸気表」があります。 蒸気表は、圧力を基準にしたものと温度を基準にしたものがあり、それも絶対圧力(Mpa)で表示されています。 本表では圧力基準で示しています。通常使われている蒸気ボイラーの圧力は、圧力計で表示されるため、ゲージ圧力(Mpa・G、圧力計の読み値)を基準にした温度・熱量を【表1】に示しました。タグ:環境保全,
- (1)蒸気の性質 常温の水が、蒸気になる様子を【図1】に示します。まず、密閉容器に15℃の水を入れ、加熱します。水の温度は次第に上昇して100℃に達し、沸騰し始めます。更に加熱を続けると温度は変わりませんが、水は蒸発して蒸気になり、水が全部蒸気に変わると温度の上昇が始まります。熱量単位の表示はキロカロリー(KCal)になっていますが、現在はキロジュール(KJ)表示になっています。タグ:環境保全,
- (5)燃焼の空気比管理 ボイラーの熱効率を向上させるためには、燃焼の効率を高めなければなりません。通常、燃料には液体燃料や気体燃料が使われますが、これらのもつ炭素(C)や水素(H)などのエネルギー性物質が、熱を必要とする場所で、すべて熱エネルギーに変換されることが必要です。 燃焼とは、可燃性物質が空気中の酸素と化学的に化合して発熱する現象です。可燃性物質のすべてが燃焼して100%の熱を発生する燃焼を完全燃焼といいます。炭素と水素の燃焼方程式を次に示します。タグ:環境保全,
- (4)ボイラー効率の向上 パージ時間をどの位にするかなど、ボイラー燃焼サイクルの動作機構は、タイマー式や機械式など、ボイラーメーカーによって異なりますが、大幅な変更はほとんど不可能です。それは安全に関する機構であるからです。 前回ご紹介した、あるボイラーの運転状況を【図1】に示します。 この状態におけるパージ率は59%でありましたから、燃焼率100-59=41%を向上してボイラーの熱効率を高めるためには、着火回数を少なくして目的の蒸気発生量を得ることです。それには、燃焼可能な時間を制限することが考えられます。 この工場の加熱対象は、めっき浴などの水溶液であったため、比熱が非常に大きく浴温が容易に下がらないことから、ボイラーの燃焼可能時間を、毎時15分間に制限して運転したところ、【図2】のような運転結果が得られました。ボイラー制御盤にタイマーを設置して、毎時15分間の燃焼可能時間を設置したのです。タグ:環境保全,
- (3)ボイラーの燃焼管理 前回ご説明したように、ボイラーの燃焼では、着火の前後にプレパージとポストパージがあり、安全のために炉内の未燃ガスの追い出しを行います。このことは赤熱した炉内の耐火材に送風するわけですから、冷却され大変な熱損失になります。 ある工場のボイラー運転状況を調べた結果を【図1】に示します。これは、ボイラーが消費する電流を時系列で記録したものです。 図で明らかなように、1時間毎の着火回数は、始業前の3回/hに対して、操業時には平均13回/hと凡そ5分間に一回着火しています。 そこで電流記録計の速度を速めて、もう少し詳しく運転状況を記録して、【図2】の結果を得ました。タグ:環境保全,
- (2)ボイラーの燃焼サイクル ボイラーの燃料には、プロパンガスや都市ガスなどの気体燃料、灯油、A重油などの液体燃料が使われています。これらはいずれも、着火温度の比較的低い可燃性の危険物ですから、燃料に際しては、最優先に安全な燃焼方式が求められます。これを、ボイラーの燃焼サイクルといい、法令で規定されています。これからボイラーの燃焼方式について考えてみましょう。【図1】に、あるボイラーの給水・燃焼系のフローシートを示します。タグ:環境保全,
- (1)ボイラーの負荷率と熱効率 ボイラーの熱効率とは、燃料のもっている熱エネルギーが、どの位の割合で蒸気になったかということです。 各種燃料の保有する熱エネルギーは、その化学成分から計算できますし、実際に測定した値を仕入れ先から簡単に入手できます。燃料の使用量は、油量計やガス流量計で分かります。 しかし、蒸気発生量の把握はなかなか困難のようです。大手企業では蒸気流量計が設置されていますから容易ですが、中小企業にはないところが多いので、その把握は中々困難のようです。そこで、蒸気発生量を給水量で置き換えても熱効率の診断は可能です。しかし、発生する蒸気は、蒸気圧力によって保有する熱エネルギーは異なりますので、熱効率の計算は厳密にやろうとすると大変です。 そこで簡易的に、1ヶ月の燃料使用量と給水量(ブローした量は除きます)から、燃料1kgあたりの給水量kg(蒸気発生量)という蒸発倍数が求められます。ボイラーの常用圧力(ゲージ圧力)から蒸気のもつ熱エネルギーを蒸気表から求め、給水温度における給水のもつ熱エネルギーや、燃焼前の燃料のもつ熱エネルギーを求めれば、およその熱効率を知ることができます。タグ:環境保全,
- ボイラーにはいろいろな種類がありますが、表面処理関係で使われているボイラーは、貫流ボイラーか水管式ボイラーの小型のものが多いようです。 ボイラーの機能を簡単にいえば、水を燃料によって加熱して蒸気をつくり、それを加熱対象に輸送して、相手を加熱するためのもので、燃料のもつ熱エネルギーを水を媒体として相手に伝える熱交換器であるといえます。 【図1】に、貫流ボイラーの原理を示しました。給水ポンプでボイラー水管に送水された水は、節炭器という排熱回収部で予熱されます。次いでボイラ燃焼室の最低温部から最高温部へと進行するうちに管内で沸騰して、水と蒸気が共存する状態になります。これは気水分離器に導かれて、水分は重力で落下して、給水ポンプに戻ります。 水分を分離した蒸気は、更に加熱されて「過熱蒸気」となり、主蒸気弁を経て加熱対象へ送られます。 貫流ボイラーは、【表1】の例に示すように缶水保有量が少ないので、非常に短時間に良質の蒸気(乾き度の高いエネルギーの多い)が得られます。タグ:環境保全,
- 表面処理工程では、次のような分野に熱需要があります。 (1)加熱 (1)溶液の加熱 電気めっきなど湿式処理(水溶液による表面処理や水洗工程を伴う処理)では、化学反応を促進するために溶液の加熱を行い、適切な温度に維持します。例えばめっき浴、脱脂浴、電解洗浄浴などは40〜60℃に維持して作業されます。また、アルミニウム合金の陽極酸化処理の封孔処理では、沸騰状態の水が使われています。 これらの熱源は、小規模の場合には投げ込み式電熱器が使われますが、規模が大きくなるとボイラーで発生した蒸気を使用しています。ボイラーの熱源は、灯油、重油、プロパンガス、都市ガス、その他です。 加熱方法は、電熱器の場合は石英・ステンレス・チタン製などの保護管を使用して、ニクロム線の発熱部を浴中に投入します。蒸気の場合には、ステンレス・チタン・タンタル製などの加熱管や熱交換器を用いて間接加熱が行われ、放熱した後の蒸気は凝縮水(ドレン)になり、回収されてボイラーへ給水されます。 これらに対する省熱対策としては、できるだけ作業温度の低い処理浴への切り替え、めっき槽などの槽璧や液面保温による熱損失の防止が行われています。ミスト防止剤を使用して局所排気をなくすることも、重要な省熱対策の一つです。タグ:環境保全,
- (7)排気装置 表面処理工程には、ミスト(水素ガスなどが、酸などの溶液を同伴して発生する霧状の飛沫)やガスなどが発生する工程が多く、これらに対する安全衛生上の対策として、排気装置が使われています。 排気装置は、排気フード、排気ダクト、ガス洗浄装置、排気ファンなどで構成されています。ガス洗浄装置は、通常、排気を洗浄水で洗浄して大気に放出する湿式洗浄方式が用いられています。 排気ファンは、静圧の低いシロッコファンが多く使われていますが、この電力が無視できません。このため次のような対策がとられています。タグ:環境保全,