(1)ヒートポンプの原理
クロムめっきやアルミニウムの陽極酸化処理のように、溶液の電気分解を伴う表面処理工程では、電流効率が低いため、皮膜生成を伴わない電力は、ジュール熱となって発熱し、浴温を上昇させます。
従って、浴温を一定に保つためには、電解浴を冷却することが必要です。従来は冷凍機を使ってチル水(冷水)をつくり、それを熱交換器に循環して、電解浴を冷却しておりました。この場合、ジュール熱は、冷凍機のコンデンサーからクーリング・タワーを通じて大気中に放散されていました。
この捨てていた熱は、温度が低くて利用価値がありませんでしたが、低温水から高温水が得られるヒートポンプを使用することによって、この廃熱を再利用することができるようになりました。
ヒートポンプとは、一口に言えば、従来の冷凍機の改良品で、冷凍機のコンデンサー(冷媒の凝縮器)の凝縮温度を、従来よりも高くなるように設計してあり、クーリング・タワーから捨てていた温度よりも、遥かに高い温度の温水が得られるようになっています。従って、同一工程中の、加熱を必要とする部門の加熱源として使用することができます。
ヒートポンプには、圧縮式と吸収式がありますが、圧縮式のヒートポンプのヒートサイクルを【図1】に示しました。図に従って、ヒートポンプの動作を説明します。
膨張弁を通過した冷媒は、急冷されて蒸発器に入り、そこでめっき液を冷却して熱を奪います。
ついで、圧縮機で圧縮されて凝縮器に導かれ、熱を発生します。通常、ここで高温水が得られます。温水に熱を与えて温度低下した冷媒は、再び膨張弁に向かいます。
ヒートポンプを評価する指標として、成績係数(COP:Coefficinet of Performance)が用いられます。これは、COP=Qc/L で示されます。これは、圧縮機での仕事L単位当たり、どれだけ熱を発生させたかを示すもので、図の場合は、100/25=4 となります。すなわち、入力した電力の4倍の熱が発生したことを意味しています。