環境保全
- (1)常時排水の沈降分離 排水処理の対象となる重金属としては、めっき浴中に溶解しているめっき金属や、めっきされる素材から酸などに溶解した金属などがあります。したがって常時排水にはこれらが含有されていることになります。 常時排水に含有される重金属イオンの処理は通常、酸またはアルカリによるpH調整により、不溶性の金属水酸化物を生成させて、沈降分離します。この場合、微細な水酸化物の沈殿のままでは沈降分離に多くの時間を必要としますので、これに凝集剤を添加して凝集させ、大きなフロックにして沈降時間を短縮します。この方法を凝集沈降分離といいます。 水酸化物の沈殿は沈降槽下部に沈降し、上澄水は、各地に適用されている放流規制pH(通常5.8〜8.6)に調節してから、下水道や公共水域に放流します。 金属イオンの溶解度が最も小さくなるpH領域を【図1】に示します。タグ:環境保全,
- 六価クロムが社会の話題をさらっていますが、問題点は二つあります。一つはめっき工程や化成工程での六価クロムであり、もう一つは、化成皮膜中に存在する六価クロムの問題です。今回は、前者についてのお話です。 (1)常時排水 (1)還元法 六価クロムを含有する無害化処理対象物としては、シアンの場合と同様に、常時排水と濃厚廃液があります。常時排水は、クロムめっきや亜鉛めっき後のクロメート処理の工程から排出されますが、処理の方法としては一般に次のように還元処理やイオン交換法が行われています。タグ:環境保全,
- 表面処理工場には、いろいろな法規制が適用されています。例えば、有害物質を発生または飛散させる工程では、飛散物質を補足する局所排気やミスト防止剤の使用などの対策が労働安全衛生上要求されます。捕捉された物質はめっき液として工程内で再利用したり、使用不能の場合には廃液になります。また、ミストやガスは排ガス洗浄塔で水に吸収されて濃厚廃液となります。これら廃液はいずれも排水処理の対象になります。 工場から最も多量に発生する排水は、水洗工程で発生する常時排水です。これは、めっきなどの1工程が終了する毎に、その工程の付着液を洗浄するための排水で、この排水をいかに節水するかが各社腕の見せどころです。 節水の方法としては、各工程が終了した時点で「液切れ時間」を設定して、液のくみ出しを減少させたり、入浴水洗を止めてシャワーにしたり、水洗槽への連続通水を止めて、回分式水洗(バッチ水洗)にするとか、あるいは、水洗効果を高めるために、製品の流れと洗浄水の流れを逆向きにした向流多段水洗という方法などを採用しています。この場合の水洗槽の段数としては、2〜3槽が普通のようです。このような水洗槽からの排水である常時排水が、酸化・還元・中和など化学処理の系統別に排出されます。タグ:環境保全,
- 水質汚濁防止法など水質関連法令では、健康項目に「ほう素およびその化合物」が10ppmに規制されております。ほう素(B)を除去する方法には、イオン交換法など幾つかの方法が開発されておりますが、最も確実な対策は、ほう素を使用しないことです。 めっき工場におけるほう素発生源はニッケルめっきです。電気ニッケルめっきは、光沢、半光沢、つや消しめっきなど外観の変化に富み、金、銀、クロムめっきなどの下地めっきとして装飾めっきや機能めっきなど多方面に使われています。 最も多く使われているめっき浴はワット浴で、これには通常、めっき液1リットル中に30gほどの「ほう酸」が含まれています。 最近、ほう酸を使用しないニッケルめっき浴が東京都産業技術研究所により開発されました。これは、ほう酸の代わりにクエン酸を使用するものですが、従来から使われてきたワット浴の設備や作業条件を変更することなく使用できるばかりでなく、これによる皮膜は、微細で硬いが柔軟性に富み、いおうを含む光沢剤を使用しなくても平滑な外観をもっております。 【表1】に両者の比較を、【表2】にクエン酸浴の適用が期待される応用分野を示します。タグ:環境保全,
- 表面処理関係で、鉛に関係するものは、鉛めっき、錫-鉛はんだ、錫-鉛はんだめっきなどです。このうち鉛めっきは蓄電池や化学機械など、一般消費者の手の届かないところで使用されています。問題となるのは、プリント基板などの回路に使われている「はんだめっき」であります。 はんだ付け(ソルダリング)は、プリント配線回路と電子部品など、固体金属と固体金属の間に、そのいずれの金属よりも融点の低いはんだを溶かし、毛細管現象により吸い込ませて接合し、一体化することで、良好なはんだ付けは、固体金属とはんだとの間には、拡散または金属間化合物を生成させることが必要です。 はんだ付け金属面に施した各種表面処理と、はんだ付け性などの特性を、【表1】に示します。表によると、接合面をはんだめっきすることにより、良好なはんだ接合が可能であることが分かります。(はんだめっきは、70℃以下で可能)タグ:環境保全,
- 前回、クロムめっき皮膜は六価クロムを全く含有しませんが、クロム酸を主成分としたクロメート皮膜には存在し、その量が多いほど耐食性が優れていることを紹介しました。 クロメート処理のように、化学的に皮膜を形成する処理法を化成処理、それによってできた皮膜を化成皮膜といっておりますが、従来はこれにもクロム酸が用いられました。 代表的なものとして、アルミニウム合金やマグネシウム合金の密着性を高めるための化成処理があります。この両金属は活性で、空気中で天然の酸化皮膜を形成するため、直接塗装すると極めて密着性が悪く塗膜が脱落してしまうからです。また大量に生産されている表面処理鋼鈑にも、めっき後の後処理として、クロメート処理が施されてきました。 これらに対する六価クロムフリー対策として、様々な対策が研究開発されてきました。その方向は二つに分かれます。 (1)三価クロムクロメート皮膜 六価クロムは規制されていますが、三価クロムは規制されていませんので、従来から使いなれたクロム化合物を使った三価クロメート処理液を使って化成皮膜を形成しようとするものです。現在の亜鉛めっき後のクロメート皮膜の主流になっています。あるメーカーの販売している商品の一例を【表1】に示しました。タグ:環境保全,
- 水質汚濁防止法、土壌汚染対策法など我が国の環境保全関連や、労働安全衛生関連の法令では、「六価クロム」は有害物質に指定され、その使用方法、排出方法、排出濃度等には厳しい基準が定められています。 またヨーロッパの電気・電子機器の有害物規制(RoHS)等に対応するために、ゴム、プラスッチク、塗料、化成皮膜、セラミックなどの六価クロム含有量(ppm)が問題になっています。 六価クロムとは 六価クロムとは何でしょう。クロムという金属は、元素番号24、融点1905℃、比重7.1の金属元素で、化合物の殆どが有色であることから「chroma(色)」と名づけられたといわれています。 クロムは、装飾用クロムめっき・工業用(硬質)クロムめっきのほかに、高速度鋼、ステンレス鋼、ニクロム、KS磁石鋼などの合金成分として使われています。 クロム金属は、水には溶けませんが、クロム化合物は水によく溶けます。この場合、クロム化合物中のクロムは、2~6個の正の電荷をもったプラスイオンになります。電荷をいくつ持つかは、化合物によります。タグ:環境保全,
- 重金属類は、蛍光X線分析、原子吸光光度法、ICP発光分析などの方法で容易に分析できますが、シアン(CN-)や六価クロム(Cr6+)などは別の方法が必要です。それは試料の前処理を行った後、ある指示薬を添加して発色させ、その色濃度が対象物質の濃度と比例することを利用する吸光光度法です。 (1)測定原理 吸光光度法による濃度測定の原理を【図1】に示します。この方法は比色法といわれているある色を標準色と較べる方法とよく似ています。【図1】(a)に示すように発色した試料を測定セルに入れ、光源からでた光をフィルタで、特定の波長の光(Io)にして透過させると、光の一部が 吸収されます。透過光(It)は光電地で電気信号に変換され透過率や吸光度として表示されます。 フィルタの代わりにプリズム等を用いると、広範囲に光の波長を選ぶ(分光)ことができます。ある発色した試料に対して波長を変えて吸光度をしらべると、【図1】(b)のように最大吸光波長がわかります。この波長の光を用いて濃度既知の標準溶液の吸光度を調べ、検量線図(c)を作成しておけば、未知試料の濃度を知ることができます。タグ:環境保全,
- (1)測定原理 これは、JISにも採用されている公定分析法です。高温の炎(炎を使わない方法もある)の中に原子を置くと、原子核を取り巻く電子のうち、一番外側にある電子が励起して高いエネルギー準位に移り、短時間でもとの低準位に戻りますが、このとき原子特有の光を発光します。これが「原子発光」で、各原子はそれぞれ特有の光を発します。 一方この特有の光を外部から原子に当てると、この光が原子によって吸収されます。これが「原子吸光」で、吸収される光の度合い(吸光度)によって原子の濃度を知ることができます。 (2)測定装置 原子吸光光度計の光学系の一例を図に示します。ホロカソードランプ(HCL)は測定しようとする原子の吸光波長のランプを用い、重水素(D2)は、バックグラウンド補正を行うために使用します。原子を励起するためのバーナー(B)の熱源には水素、アセチレン、亜酸化窒素などが使われます。バーナーには試料を噴霧状にして注入します。バーナーの炎を通過した光は、光電子倍増管(PM、ホトマル)によって電気信号に変換され、濃度として表示・プリントアウトされます。タグ:環境保全,
- WEEEやRoHS規制をクリアーするためには、製品中の有害物質含有量を分析しなければなりません。簡易分析に活躍している蛍光X線分析法、公定分析の原子吸光光度法、ICP発光分光分析などの機器分析法についてご紹介しましょう。先ず、蛍光X線分析からはじめましょう。 (1)測定原理 物質を構成する原子は、それぞれ固有の殻電子準位をもっています。この原子にX線、γ線、電子線などを照射しますと、その原子特有の性質をもつX線(特性X線)が発生します。このX線を蛍光X線といい、そのエネルギー(波長)は、原子の内殻電子準位差すなわち原子固有の殻間遷移エネルギーに等しいことが分かっています。 この蛍光X線を用いて、物質中に存在する原子の種類と量を解析する方法を蛍光X線分析法といいます。原子の種類を特定する定性分析と、含有量を調べる定量分析が行われています。タグ:環境保全,
- (1)法の内容 工場から排出する排水については、法令で定める水質基準を遵守しなければなりませんが、工場敷地の土壌の管理も重要です。敷地内に有害物質が漏洩したり、しみ込んだりして、土壌や地下水を汚染したりすることがないよう対策をしておくことが必要です。 過去に有害物質を使用していた工場が移転したり、廃業した跡地を、公園や住宅などに使用した場合に、土壌が重金属やトリクロロエチレンなどの有機化合物で汚染されており、住民に被害を及ぼす可能性が発生しました。 その対策として、土壌汚染対策法が制定され、平成15年2月15日から施工されました。この法律の趣旨は、表面処理など有害物質を使用した工場が、その事業を廃業して売却したり、建物などを建て直す場合には、汚染の有無を調査し、もし汚染されていれば浄化しなさいというものです。 この法律がいう有害物質とは、次のようなものです。 ■第1種特定有害物質 揮発性有機化合物(トリクロロエチレンなど) 11種類 ■第2種特定有害物質 鉛およびその化合物などの重金属類 9種類 ■第3種特定有害物質 シマジンなどの農薬 5種類タグ:環境保全,
- 表面処理と環境保全 環境保全の背景 過去において、電気めっき工場など金属表面処理工場は、シアンや六価クロムによる公害問題を発生して、公害企業として批判を浴び、乏しい資金の中から公害防止施設に大きな投資や、多大なランニングコストを強いられてきました。 湿式表面処理では当然水を使い排水が発生しますので「水質汚濁防止法」が施工され、また、酸・アルカリ・毒物・劇物などを使用しますので、「毒物劇物取締法」が適用され、公共水域に排出する排水には「排水基準」遵守が義務付けらました。下水道に排出する排水には「下水道法」の適用を受け、その地方の「下水道条例」の「排水基準」が適用されます。 また、工程内には有害ガスやミストが発生する部門があれば、これらを除去する浄化装置の設置や運転管理など、濃度測定や自主点検が求められます(労働安全衛生法)。 めっき液や製品の乾燥に用いられるボイラーや、塗装の焼付け乾燥などは「大気汚染防止法」の排気ガス規制を受けます。 また、各自治体には「公害防止条例」があり、水質、大気、騒音、振動などを規制しています。 これら法規制は、成立当初から見ると、年々規制項目は増大し、規制値は益々厳しくなっております。タグ:環境保全,