(1)ボイラーの負荷率と熱効率
ボイラーの熱効率とは、燃料のもっている熱エネルギーが、どの位の割合で蒸気になったかということです。
各種燃料の保有する熱エネルギーは、その化学成分から計算できますし、実際に測定した値を仕入れ先から簡単に入手できます。燃料の使用量は、油量計やガス流量計で分かります。
しかし、蒸気発生量の把握はなかなか困難のようです。大手企業では蒸気流量計が設置されていますから容易ですが、中小企業にはないところが多いので、その把握は中々困難のようです。そこで、蒸気発生量を給水量で置き換えても熱効率の診断は可能です。しかし、発生する蒸気は、蒸気圧力によって保有する熱エネルギーは異なりますので、熱効率の計算は厳密にやろうとすると大変です。
そこで簡易的に、1ヶ月の燃料使用量と給水量(ブローした量は除きます)から、燃料1kgあたりの給水量kg(蒸気発生量)という蒸発倍数が求められます。ボイラーの常用圧力(ゲージ圧力)から蒸気のもつ熱エネルギーを蒸気表から求め、給水温度における給水のもつ熱エネルギーや、燃焼前の燃料のもつ熱エネルギーを求めれば、およその熱効率を知ることができます。
給水温度や燃料温度は、季節によって異なりますので、それらは季節変動係数としてある範囲に収まります。
最近のボイラーは優秀で、熱効率98%などという数値がカタログには記載されていますが、それは最高の状態で、連続運転した場合です。実際の運転状態においては、そんなに高い値は得られません。それは、ボイラーの負荷率が操業状態によって違うからです。
例えば、始業時の表面処理工場では、脱脂浴やめっき浴など加熱を必要とするものに連続して蒸気を送る必要がありますが、一旦所定の浴温まで温度が上昇してしまうと、これらの水溶液は比熱が大きいために、温度低下が少なく、以後は僅かな蒸気供給量ですみます。
従って始業前〜始業時のボイラーの運転状況は、負荷率100%であり、非常に高い効率の運転がされていますが、表面処理作業が定常状態に入ると、低負荷の状態になり、バーナーは燃焼したり停止したりする状態になり、熱効率は低下します。つまり、低負荷状態の運転は、熱を排ガス中に放出する比率が多くなってしまうのです。
あるボイラーの負荷率と効率の関係を、【図1】に示しました。