乾式表面処理
- イオンプレーティングは、真空蒸着装置の基板と蒸発源との間に、蒸発材料をイオン化する装置を付加したものです。真空槽に、アルゴンなどの不活性ガスを導入し、10-1〜10-2Paの雰囲気で、蒸発した蒸発材料の原子をグロー放電のプラズマ中でイオン化し、これに電気エネルギーを与えて加速し、基板に衝突させて皮膜を形成するものです。次のような特徴をもっています。
- 化学気相成長法(CVD)は、基材(ワーク)の表面に、炭化物、酸化物、窒化物、合金、単体元素などを合成して、表面改質するものですが、その皮膜や合成原料の種類、合成温度、応用面などについての一例を【表1】に示します。タグ:
- ダイヤモンド状カーボンとは、Diamond Like Carbon (DLC)のことで、ダイヤモンドとよく似た特性をもつ炭素膜であります。成膜法は、【表1】に示すとおり多くの成膜法がありますが、これらの特徴は、様々な方法で生成した炭素イオンを常温に近い低温で基材に叩きつけて成膜することで、成膜時にとくに加熱を必要としないことです。 また、膜の諸性質は、成膜法により大きく異なりますが、共通的な特徴は、摩擦環境に関係なく摩耗係数が小さいことです。しかも、相手材の影響を殆ど受けないことが大きな特徴です。タグ:
- (1)主に装飾を目的とした成膜 (2)機能向上を目的とした成膜 一般金型、プラスチック金型、工具、産業機器部品などへ適用。 « 前の講座へタグ:
- イオンプレーティング(IPと略称することもある)は、【表1】に示しますように、湿式プロセスの電気めっきなどの及ばない高い硬度を活かして、多方面に活用されています。タグ:
- PVDやCVDによって成膜される硬質皮膜の特徴について、【表1】に示します。最初に開発されたのはTiNであり、これが硬質でありながら金色をしているため、傷がつかない金色めっきとして装飾品、時計のバンド、めがねフレームなどに盛んに用いられました。 その後この膜が、硬質であること、摩擦係数が小さいことから、工具メーカーが切削工具に採用するようになり、次第に応用範囲が拡大されるようになりました。タグ:
- (2)プラズマCVD 熱CVDの成膜温度を低温化するためにプラズマCVDが開発されました。 直流(Direct Current)プラズマCVDは、【図1】に示すように、ベースと処理物間に直流のグロー放電を起すことによって、ガス反応を促進させ、TiNを500〜550℃の低温で成膜させます。 この方法は、膜表面が、熱CVDよりもはるかに滑らかであること、低温のために処理に伴う処理物の変形の心配がないことが特徴です。 高周波(Radio Frequency)プラズマCVDは、高周波振動によってガス反応を促進するもので、半導体分野のプラズマCVDの主流です。この方法は、構造が最も簡単で、大型化も容易です。処理物を直接高周波振動させる方法と、高周波コイルを使って振動させる方法があります。 マイクロ波プラズマCVDは、ギガヘルツのマイクロ波を、導波管を通じて処理槽に送ります。安定したプラズマが得られること、制御が容易であるなどの特徴がありますが、装置の大型化は困難です。タグ:
- 化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition)はCVDと呼ばれ、多くの分野で活用されています。この方法の成膜の原理は、真空容器内で成膜材料を蒸発するのではなく、外部から成膜材料のガスを導入して、高温の容器内で基板との化学反応によって成膜するものです。その方法には次表のようなものがあります。タグ:
- 真空容器内に、基板とターゲットとなる金属を対峙させ、真空にしてから、少量のアルゴンガスを導入し、基板(+)と金属(−)間に直流電圧を印加すると放電が起こります。この放電によってアルゴンはイオン化して金属に衝突します。すると金属から金属原子やイオンが叩き出されて基板上に堆積します。この方法は直流スパッタリングと呼ばれますが、次のような方法があります。 (1)直流スパッタリング 直流によるグロー放電を利用するもので、2極、3極、4極スパッタリングがあります。2極スパッタリングは、ターゲットが一極で、プラズマ発生と同時にイオンの加速が行われます。3極、4極スパッタリングは、プラズマを発生させるための熱陰極が別に設置されているので、広範囲の成膜圧力が採用できます。 (2)高周波スパッタリング 直流スパッタリングは導電性のターゲットに限られますが、RF法では、グロー放電を利用するためターゲットに絶縁物を使用することができ、広範囲の成膜が可能です。タグ:
- イオンプレーティングは、真空蒸着と同様な真空容器内で蒸発した薄膜材料の蒸気をイオン化して、負の電圧を印加した基材にたたき付けて皮膜を形成するものです。真空蒸着はどちらかといえば密着性が劣りますが、本法はこれを改善したもので、チタン系やクロム系の硬質膜の成膜に使われ、切削工具や金型など使用条件の厳しいものに用いられています。最初に、直流法が登場しましたが、現在は次のような4つの方法に大別できます。 (1)活性化反応蒸着法 ARE法(Activated Reactive Evaporation)といわれ、イオン源の上部に設置されたリング状または板状のプローブ電極(+極)によって、イオン化が行われます。イオン源の加熱は電子ビームで行います。皮膜表面は滑らかで、温度上昇の少ないのが特徴です。 (2)高周波励起法 RF法(Radio Frequency)といわれ、イオン化の促進は、蒸発源上部に設けられたコイルによる高周波振動によって行います。ARE法と同様に、基板の温度上昇が少ないのが特徴です。装飾用や機能性付与のために、金属膜や種々の化合物膜の生成に用いられます。タグ:
- 真空蒸着は、ドライプロセスとしては基本的なもので、眼鏡やカメラのレンズなどの反射防止のために古くから行われてきました。 蒸着の原理は、真空容器中に蒸発源と基板を置き、真空にして、作ろうとする薄膜材料を前回述べたように抵抗加熱、イオンビームなどの方法で蒸発させ、基板に付着させるもので、丁度ストーブに置いたやかんから出た水蒸気が、窓ガラスに付着して水滴をつくるようなものであります。 真空度が高いほど純度の高い金属皮膜が得られるようですが、一般にはPa-2以下で行われ、純金属や昇華し易い酸化物の皮膜生成に用いられます。合金膜や炭化物膜、窒化物膜などの生成は困難のようです。 蒸発材料が2種類以上の金属で構成されている合金の場合、個々の金属の蒸気圧が異なるため、蒸気圧の高い金属から蒸発をはじめ、蒸気圧の低い金属の蒸発が遅れてしまいます。従って、黄銅のように銅-亜鉛合金の場合、低温で蒸気圧の高い亜鉛だけが蒸発して、銅は蒸発源の坩堝に残ってしまいます。タグ:
- ドライプロセスにおいて、薄膜をつくるための材料を蒸発させる装置を気化源、蒸発源、ソースなどといいますが、次のような方法があります。 (1)抵抗加熱気化源 高融点のタングステンの線状のフィラメントやボート状の電熱ヒーター上に蒸発材料を載せて電流を流し、加熱によって溶融・蒸発させます。加熱ヒーターとしては通常タングステン、タンタル、モリブデン、ニオブなどの高融点金属が用いられますが、蒸発温度の低い蒸発材料の場合には、もっと低融点の安価な金属が使われます。 (2)高周波誘導加熱気化源 大量にあるいは大面積に薄膜を形成する場合には、抵抗加熱気化源では材料の蒸気が足りません。そこで登場したのが高周波焼入れなどの加熱方法としてお馴染みのこの方法です。アルミナやグラファイトの坩堝を高周波コイルの中に入れて高周波誘導加熱し、坩堝の中の材料を蒸発するものです。主としてアルミニウムの大量蒸発に用いられています。タグ:
- ドライプロセスでは、金属の薄い膜をつくるのに幾つかの方法があります。通常この膜を「薄膜(はくまく)」といっています。はっきりとした定義がある訳ではないのですが、膜の厚さは、大体1μm以下のもので、ナノメータ単位の薄膜の作製も可能であります。 薄膜をつくるには、まず、薄膜となる材料を気化して蒸気にすることが必要であります。これを「気化源(ソース、蒸発源ともいう)」といいますが、気化する方法には、電気による抵抗加熱、電子ビーム、スパッターリングなどがあります。 また、薄膜を形成しようとする素材のことをドライプロセスの世界では、「基板(サブストレートともいう)」といいます。 次に、薄膜をつくる方法について、その概要をお話しましょう。 (1)蒸着法 いろいろの材料を蒸発させて蒸気にする最も簡単な方法は、熱を加えて溶解・蒸発させる方法で、古くから使われてきました。真空容器に、気化源と基板をセットして真空ポンプを運転して排気し、所定の圧力になったら、気化源のスイッチを入れて材料を加熱します。 気化源からは、材料の蒸気が盛んに発生し、四方に飛び散ります。冷たい基板に衝突した蒸気は、直ちに冷却され液体→固体となり、薄膜を形成します。タグ:
- 真空システムをどのように構築するかは、その目的によって異なります。その一例として、油拡散ポンプ排気系を【図1】に示します。 運転の手順は、まず「あらびきバルブ」を開いて、油回転ポンプを運転します。あらびきとは、「本びき」も対応した用語で、予備排気として大部分の空気を真空容器から抜くという意味です。105Paの大気圧から1〜10-2Paの真空にします。これに要する時間は、大体5〜6分です。 ついで補助バルブを開き、あらびきバルブを閉じて、真空容器→油拡散ポンプ→油回転ポンプ→大気へ放出の回路をつくります。(油拡散ポンプ油ボイラーの予熱時間に15〜30分が必要です。)タグ: