真空蒸着は、ドライプロセスとしては基本的なもので、眼鏡やカメラのレンズなどの反射防止のために古くから行われてきました。 蒸着の原理は、真空容器中に蒸発源と基板を置き、真空にして、作ろうとする薄膜材料を前回述べたように抵抗加熱、イオンビームなどの方法で蒸発させ、基板に付着させるもので、丁度ストーブに置いたやかんから出た水蒸気が、窓ガラスに付着して水滴をつくるようなものであります。 真空度が高いほど純度の高い金属皮膜が得られるようですが、一般にはPa-2以下で行われ、純金属や昇華し易い酸化物の皮膜生成に用いられます。合金膜や炭化物膜、窒化物膜などの生成は困難のようです。 蒸発材料が2種類以上の金属で構成されている合金の場合、個々の金属の蒸気圧が異なるため、蒸気圧の高い金属から蒸発をはじめ、蒸気圧の低い金属の蒸発が遅れてしまいます。従って、黄銅のように銅-亜鉛合金の場合、低温で蒸気圧の高い亜鉛だけが蒸発して、銅は蒸発源の坩堝に残ってしまいます。 真空蒸着は、金属材料に対してよりもガラスやプラスチック製品が多く、蒸着材料としてはアルミニウムが圧倒的です。他の金属、金、銀、クロムなどは極く僅かのようです。 応用例としては、プラスチック製のネームプレート、マーク、微章、玩具、反射鏡などで、ガラスへの応用としては、レンズの反射防止膜、反射増加膜、フィルターなどがあり、これらの光学薄膜には、フッ化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウムなどが用いられ、これらが単層膜または積層膜として使われています。 |