代表的な真空ポンプについて、ご紹介しましょう。
(1)油回転ポンプ
水ポンプのように、円板状のシェルの中を、弁をもった回転子が回転して、吸気・圧縮・排気を行うもので、擦動部の潤滑に油を使います。大気圧から吸気するので、多くの真空システムで初段の真空ポンプとして使われています。このポンプにはその構造から、回転翼形、カム形、揺動ピストン形があります。2段式のものは、2つのポンプを直列につないだもので、高精度のものは10-3Pa程度に到達するものもあります。【写真】にモータ直結型油回転ポンプの外観を示します。
(2)油拡散ポンプ
このポンプは、ノズルから音速の2倍以上の高速で噴出す油の蒸気噴流の勢いに乗せて、気体を運び去るポンプです。その構造を【図1】に示しますが、ボイラーで加熱され、蒸発した油の蒸気は各ジェットから噴出し、ジェット流内に拡散した気体をポンプの下方に押しやります。この気体は1Pa位まで圧縮され、油回転ポンプに引き継がれ、油回転ポンプで更に大気圧まで圧縮されて、大気中へ放出されます。
一方、油はジェットから噴出したあと、水冷されたポンプ容器の内壁で凝縮されて油滴となり、壁面を伝わってボイラーに戻ります。
このポンプには、油の逆流を防ぐため、吸入口側にはコールドキャップ、排出口側には油の流出を防ぐため、水冷式のバッフルや液体窒素などで冷却したトラップを設置します。