PVDやCVDによって成膜される硬質皮膜の特徴について、【表1】に示します。最初に開発されたのはTiNであり、これが硬質でありながら金色をしているため、傷がつかない金色めっきとして装飾品、時計のバンド、めがねフレームなどに盛んに用いられました。
 その後この膜が、硬質であること、摩擦係数が小さいことから、工具メーカーが切削工具に採用するようになり、次第に応用範囲が拡大されるようになりました。

【表1】ドライプロセスによる硬質皮膜

種類 特徴 主な成膜法
TiN 金色を呈するので、傷がつかない金色めっきとして装飾品に利用されている。1800~2000Hvと超硬質であることから切削工具やプラスチック金型、自動車部品への利用が進行している。ただし500℃以上は硬度低下。 イオンプレーティング
スパッターリング
熱CVD
プラズマCVD
TiC 銀白色をしている。TiNより硬質約3000Hvで摩擦係数が低く摺動特性が優れている。高温酸化性がかなり低い。金型に適用。 イオンプレーティング
熱CVD
TiCN 茶褐色を呈し、硬さや磨耗係数はTiNとTiCの中間で、プレス金型や冷間鍛造用金型に適用される。高温酸化特性はTiCと同程度。CとNの比により特性は変化する。 イオンプレーティング
熱CVD
プラズマCVD
TiAlN 暗赤紫色を呈し、硬さや磨耗係数はTiNと同程度。高温酸化特性は優れており、大気中で800℃くらいまで変質しない。重加工の切削工具、プレス金型、プラスチック金型、ダイカスト金型、ガラスレンズ成形金型など。 スパッターリング
アーク蒸発イオンプレーティング
プラズマCVD
TiCrN 硬さや磨耗係数はTiNと同程度であるが、高温酸化特性は遥かに優れている。高温耐食性に優れ、プラスチック金型、ダイカスト用金型に採用されている。 スパッターリング
アーク蒸発イオンプレーティング
Cr-N 銀白色を呈し、硬さは皮膜中のN含有量によって1000~1800Hvに変化する。数十μmの厚膜も容易に得られるので耐食皮膜としても用いられる。熱膨張係数が小さいことから摺動部品や自動車部品に適用されている。 スパッターリング
アーク蒸発イオンプレーティング
Al2O3 Ti系の皮膜よりも高温酸化特性や高温硬さが優れているため、重切削用工具に用いられる。ただし、脆弱なため中間膜にTiNやTiCNが併用される。 熱CVD
W2C Ti系の皮膜より若干硬さは低いが、500℃くらいで成膜できる。10μm以上の厚膜が容易に得られるので、密着性を高めるために、下地にNiめっきなどを施して実施する。 熱CVD