(1)金属の比熱
水を使う湿式の表面処理工程での熱収支を考えてみましょう。いま、次に示すようなめっき工程について、複雑なことを除いて単純に考えてみます。
めっき処理の条件は、室温20℃、アルカリ脱脂浴温55℃、電解脱脂浴温55℃、ニッケルめっき浴温60℃、水洗温度20℃、酸洗浴温20℃、処理金属:黄銅素地、処理量:3000Kg/日とします。
この工程における熱の動きを考えてみますと、20℃黄銅素地の製品3000Kgが、アルカリ脱脂で消費する熱量は、次式で示されます。
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これが、次の水洗では、すべて冷却されてしまいます。電解脱脂でも55℃でありますから、所要熱量、加熱2は、40,425KJ/日となります。ニッケルめっきでは、
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これらの熱需要を合計すると、40,425+40,425+46,200=127,050KJ/日となり、これらはすべて冷却水の温度上昇となって排出されてしまいます。このように、表面処理工程の排出水は、水という物質が排出されるだけでなく、熱というエネルギーも排出されていることが分かります。
【表1】に各種金属の比熱を示しました。これは、1Kgの金属を1℃加熱または冷却するのに必要な熱エネルギーで、マグネシウムやアルミニウムが大きな値であるのに対して銅、金、銀などは小さい値です。これらの値と水を比較すると、水がいかに温めにくく、冷めにくいかが分かります。
この値は、金属の熱の伝わり度合いを示す、熱伝導率とは違います。
【表1】金属の比熱(KJ/Kg・k)0〜100℃の平均値
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