適用範囲
この規格は、めっきおよびそれを施したものの耐食性試験方法について規定する。
なお、めっきとは、電気めっき、無電解めっき、気相めっきおよび溶融めっきなどをいう。
定義
この規格で用いる主な用語の定義は、JIS H 0211およびJIS H 0400によるほか、次による。
用語 | 定義 |
---|---|
中性塩水噴霧試験 | 中性の塩化ナトリウム溶液を用いて行う連続噴霧試験 |
酢酸酸性塩水噴霧試験 | 酢酸酸性の塩化ナトリウム溶液を用いて行う連続噴霧試験 |
キャス試験 | 酢酸酸性の塩化ナトリウム溶液に塩化第二銅(Ⅱ)二水和物を添加した溶液を用いて行う連続噴霧試験 |
コロードコート試験 | 試験片にコロードコート泥を塗布し、乾燥後、湿気槽内に放置して行う試験 |
二酸化硫黄ガス試験 | 二酸化硫黄ガスの雰囲気で行うガス腐食試験 |
中性塩水噴霧試験方法
要旨
塩水噴霧試験装置などを使用して、中性の塩化ナトリウム溶液を噴霧した雰囲気において、めっきの耐食性を調べる試験方法である。
試験条件
試験条件は下表のとおりとする。試験時間は、受渡当事者間の協定による。
なお、推奨する時間は、8時間、16時間、48時間、96時間、240時間、480時間および720時間とし、試験期間中は、噴霧を中断してはならない。
項目 | 調整時 | 試験中 |
---|---|---|
塩化ナトリウムの濃度(g/ℓ) | 50±5 | 50±5 |
pH | 6.5 | 6.5~7.2 |
噴霧量(mℓ/80cm2/h) | - | 1.5±0.5 |
試験槽内温度(℃) | - | 35±2 |
塩水タンク温度(℃) | - | 35±2 |
空気飽和器温度(℃) | - | 47±2 |
圧縮空気圧力(kPa) | - | 70~167 |
判定方法
試験面に発生した腐食欠陥を標準図表(JIS H 8502(1999) 図3~14)によってレイティングナンバを求める方法または質量減少方法によって、めっきの耐食性を判定するものである。ただし、膨れ、割れ、などで標準図表によることができない場合には、実測によってレイティングナンバを求めてもよい。
なお、亜鉛およびカドミウムめっきの腐食欠陥の判定は、目視による白色腐食生成物または赤さび発生の有無による。
酢酸酸性塩水噴霧試験方法
要旨
塩水噴霧試験装置などを使用して、酢酸酸性の塩化ナトリウム溶液を噴霧した雰囲気において、めっきの耐食性を調べる試験方法である。
試験条件
試験条件は下表のとおりとする。試験時間は、受渡当事者間の協定による。
なお、推奨する時間は、8時間、16時間、48時間、96時間、240時間、480時間および720時間とし、試験期間中は、噴霧を中断してはならない。
項目 | 調整時 | 試験中 |
---|---|---|
塩化ナトリウムの濃度(g/ℓ) | 50±5 | 50±5 |
pH | 3.0 | 3.1~3.3 |
噴霧量(mℓ/80cm2/h) | - | 1.5±0.5 |
試験槽内温度(℃) | - | 35±2 |
塩水タンク温度(℃) | - | 35±2 |
空気飽和器温度(℃) | - | 47±2 |
圧縮空気圧力(kPa) | - | 70~167 |
判定方法
試験面に発生した腐食欠陥を標準図表(JIS H 8502(1999) 図3~14)によってレイティングナンバを求める方法または質量減少方法によって、めっきの耐食性を判定するものである。ただし、膨れ、割れ、などで標準図表によることができない場合には、実測によってレイティングナンバを求めてもよい。
キャス試験方法
要旨
キャス試験装置などを使用して酢酸酸性の塩化ナトリウム溶液に塩化銅(Ⅱ)二水和物を添加した溶液を噴霧した雰囲気において、めっきの耐食性を調べる試験方法である。
試験条件
試験条件は下表のとおりとする。試験時間は、受渡当事者間の協定による。
なお、推奨する時間は、8時間、16時間、48時間および96時間とし、試験期間中は、噴霧を中断してはならない。
項目 | 調整時 | 試験中 |
---|---|---|
塩化ナトリウムの濃度(g/ℓ) | 50±5 | 50±5 |
塩化第二銅(CuCl2・2H2O)濃度(g/ℓ) | 0.26±0.02 | - |
pH | 3.0 | 3.0~3.2 |
噴霧量(mℓ/80cm2/h) | - | 1.5±0.5 |
試験槽内温度(℃) | - | 50±2 |
塩水タンク温度(℃) | - | 50±2 |
空気飽和器温度(℃) | - | 63±2 |
圧縮空気圧力(kPa) | - | 70~167 |
判定方法
試験面に発生した腐食欠陥を標準図表(JIS H 8502(1999) 図3~14)によってレイティングナンバを求める方法または質量減少方法によって、めっきの耐食性を判定するものである。ただし、膨れ、割れ、などで標準図表によることができない場合には、実測によってレイティングナンバを求めてもよい。
コロードコート試験方法
要旨
試験片面にコロードコート泥を塗布し、乾燥後、湿気槽内に放置して、めっきの耐食性を調べる試験方法である。
コロードコート泥の調整法
硝酸銅溶液(硝酸銅2.5gを純水に溶解し、500mℓに薄める)7mℓ、塩化鉄(Ⅲ)水和物溶液(塩化鉄(Ⅲ)六水和物2.5gを純水に溶解し、500mℓに薄める)33mℓおよび塩化アンモニウム溶液(塩化アンモニウム50gを純水に溶解し、500mℓに薄める)10mℓを混合する。これに、はくとう土を30g加え、均一に混合されるまでガラス棒でかくはんする。このコロードコート泥は、使用するときに新しく調製する。
操作
・試験片の評価対象面に、はけまたは筆でコロードコート泥(上記)を、円を描くようになすりながら十分に塗り、次に、一方向にはけまたは筆を動かして軽くのばし、均一かつ円滑に塗布した後、温度20±5℃、相対湿度50%以下の環境で、1時間放置して乾燥させる。
・乾燥した試験片(上記)は、直ちに湿気槽に入れ、16時間を1サイクルとして暴露する。連続して繰返しの試験を行う場合には、その都度、コロードコート泥を下記に従って除去し、新しい泥を塗って暴露する。
暴露後の処理
暴露後の試験片は直ちに注意深く取出し、清浄な柔らかい布・スポンジなどを用い、流水でコロードコート泥を洗浄し、清浄な柔らかい吸水性のある布・紙などを用いてふき取って乾かす。ただし、鉄素地のものは腐食欠陥を再現させるために、洗浄後、更に2時間、湿気槽内に暴露してから取出す。
評価方法
5mm間隔または2.5mm間隔の直交する直線を引いた柔軟透明なプラスチック板を評価対象面に密着させ、腐食欠陥を含んだ格子数を調べ、腐食率を求めるものである。(JIS H 8502(1999) 附属書4より)
二酸化硫黄ガス試験方法
要旨
ガス腐食試験装置を使用して、二酸化硫黄ガスの雰囲気においてめっきの耐食性を調べる試験方法である。
試験条件
二酸化硫黄ガスの濃度は、下表を標準とするが、濃度の選択などについては、受渡当事者間の協定による。
なお、試験条件の確認は、少なくとも1日1回行う。ただし、数日間正常な運転が可能ならば、数日に1回の確認でもよい。推奨する試験時間は、4時間、8時間、16時間、24時間、48時間、96時間および240時間とする。試験時間中は、試験を中断したり、槽の開閉をしてはならない。
項目 | 条件A1 | 条件A2 | 条件A3 |
---|---|---|---|
二酸化硫黄ガス濃度(ppm 体積比) | 0.5±0.1 | 10±2 | 25±5 |
温度(℃) | 40±1 | ||
相対湿度(%RH) | 80±5 |
判定方法
試験面に発生した腐食欠陥を標準図表(JIS H 8502(1999) 図3~14)によってレイティングナンバを求める方法または質量減少方法によって、めっきの耐食性を判定するものである。ただし、膨れ、割れ、などで標準図表によることができない場合には、実測によってレイティングナンバを求めてもよい。