(2)めっき皮膜とベーキングの効果
ベーキングの効果は、めっき皮膜の水素透過性と密接な関係をもっています。めっき皮膜は、金属ですからいろいろな結晶構造をもっています。この結晶構造が、水素透過性と関係しています。
亜鉛やカドミウムの結晶構造は、最蜜六方構造であり、このため水素透過性が低く、ベーキング処理で脱水素処理が難しいとされています。従って、航空機部品などでは、ポーラス・カドミウムめっきなどにして、ポーラスな穴やクラックから水素を追い出しています。
また、クロムめっきでは、クロム皮膜特有のクラックから、水素が放散されるので、ベーキング処理が有効に行われるといわれています。
このように、ベーキング処理を有効にするためには、
- ピンホールのあるめっきにする。
- クラックや穴のあるめっきにする。
- 皮膜構造が粗雑であるめっきにする。
- 半光沢や無光沢めっきにする。
などが、実施されているようです。
(3)めっき厚さとベーキングの効果
素材に吸蔵された水素や、めっき皮膜に吸蔵された水素をベーキングによって追い出す場合、当然のことでありますが、めっき皮膜が厚ければ、水素が通過し難くなります。このようなときには、ベーキングの時間を長くする必要があります。
(4)処理温度とベーキングの効果
通常、ベーキング温度は190〜220℃で行われていますが、加熱により硬度や強度が低下したりする素材に対しては温度を高く設定できません。このようなときには、ベーキング時間を長くします。
(5)めっき後の放置時間
めっき後ベーキング処理までの時間を、30分以内、2時間以内などと決めている企業もあるようですが、放置時間1〜24時間の実験の結果では、ベーキングの効果に影響がないようです。
但し、素材の肉厚が厚いものについてISOでは、ベーキングまでの時間が規定されています。これは、素材の厚さが厚いと、放置している間に、素材の表面に吸蔵されている水素が、内部に拡散移動してしまうため、ベーキングによる放出が困難になるためと考えられます。