【図1】に各種めっきにおける水素脆化率を示しました。電気めっきにおいては、製品を陰極にして電解するため、水素脆化の可能性は容易に想像できますが、電気を使わない無電解ニッケルめっきでも中程度の水素脆化は発生します。これは直流電気の代わりに使われる還元剤の酸化により、水素が発生するためと考えられます。
またクロムめっきは、他のめっきのように可溶性陽極(亜鉛やニッケル陽極)を使って金属イオンを供給するめっきと異なり、鉛やグラファイトなどの不溶性陽極を使って、浴中に溶解しているクロム酸イオンを還元して金属クロムを析出させるめっきでありますから、水の電気分解が盛んに行われ水素が発生します。
【図】から、ニッケルめっきやニッケル合金めっき、亜鉛塩化めっき浴など、酸性めっき浴の水素脆化率は非常に低いのですが、シアン化亜鉛浴、シアン化銅めっき浴などのアルカリ性のめっき浴では、水素脆化が起こり易いことが分かります。
一般に、酸性めっき浴の陰極電流効率が非常に高く、電流の殆どが金属イオンの還元に使われるのに対して、アルカリ性めっき浴は、陰極電流効率が低く、加えられた電流の多くが水の電気分解に使われ、水素の発生が多いためと考えられます。
亜鉛めっきのシアン浴(アルカリ性浴)と、塩化浴(酸性浴)における水素脆化率を【図2】に示しました。