水素脆性を測定する方法として、次のような方法もあります。
(2)ノッチドテンシルテスト(Notched Tensile Test)
この試験法は、ストレスラプチャーテスト(Stress Rupture Test)またはサステインロードテスト(Sustained Load Test)とも呼ばれ、米空軍・海軍をはじめ、ボーイング社、ロッキード社等でも採用され、最も信頼性の高い方法とされています。
試験方法は、引張試験機を用いて、高張力鋼のノッチ(切り欠き)付き引張試験片に、極限引張強さの75%の静荷重をかけて遅れ破壊テストを行い、200時間以内に破壊しなければ合格とする方法であります。
試験片は、高張力鋼(AISI 4340鋼)で作られ、焼きなまし状態で機械加工をした後、熱処理を行い、最後にグラインダー仕上げを行って製作されます。最後に試験片の中央にV型のノッチを付けて引張試験片とします。Vノッチの底の半径は0.01インチです。
米軍規格では、この試験片を100〜180メッシュのアルミナでドライブラストしてからカドミウムめっきを施し、所定のベーキング処理を行ってから極限引張強さの75%の静荷重をかけて放置します。もし試験片が水素脆性を起していれば、数時間〜100時間にかけて破壊が起こり、ノッチ部分で破断が起きます。
(3)ダグラス・リング・テスト
ストレス・リング・テスト(Stress Ring Test)とも呼ばれ、航空機メーカー・ダグラス社のオーバーホールマニュアルに規定されている試験法です。高張力鋼のリングに「つっかい棒」を噛ませてから、極限引張強さの90%の静荷重をかけて遅れ破壊テストを行い、200時間以内に破壊が起こらなければ合格とする方法です。
高張力鋼4340鋼で、熱処理された直径63mm、厚さ2.5mm、幅25mmのリングを使用します。これにカドミウムめっきを施し、ベーキング処理を行った後、バイスで押して楕円形に変形させてから、ストレスバー(Stress Bar)と呼ぶ「つっかい棒」を挿入して、変形を保って放置するもので、極限引張強さの90%の応力が得られます。
この方法は信頼度において議論が多く、ダグラス社以外の航空会社や、空軍などもこの方法を認めていないのですが、特別の試験機を必要とせず、便利な方法であるといわれています。 Cリングの外観を【図1】に示しました。 |