(2)めっきの電流密度
めっき槽内で、陽極から陰極に向かって流れる電流の強さは一様ではありません。両極の形状や表面積、1本の引っ掛けでは、懸垂されている上下の位置、両極の相対する距離、めっき液の流動状態や温度分布などによって異なります。
そしてめっき皮膜の電着速度に最も大きな影響を与えるのが、陰極電流密度(A/dm2)です。
【図1】に、これらの関係を示しました。
電気の性質として、当然、尖った部分には電流が集中しますし(高電流密度)、凹んだ部分には電流が弱く(低電流密度)、時には全く流れません。この結果は、品物の各部位のめっき皮膜の厚さのバラツキとなって表れます。電流の流れない部分には、めっきが付きません。
前回や前々回にお話しました、品物1個当たりの所要電流×製品の個数やめっき時間は、一回のめっきを行うためのめっき槽全体の値であって、個々の製品や製品各部位の膜厚がどのようになるかは、その場所に流れる電流の強さ(陰極電流密度)によって決まります。陰極電流密度の分布がどのようになっているかは、仕上がった製品の膜厚を実測して確認する以外に方法はありません。
従って、実際のめっき作業において、めっきの膜厚管理をするためには、めっき1回分の全ての製品の有効面について膜厚測定を行い、その厚さのバラツキを把握しておくことが必要です。
通常、これらの弊害をなくするため、尖った部分には補助陰極をつけて電流を弱めたり、電流の弱い部分・流れにくい部分には補助陽極を設けて電流が流れるようにします。すなわち、どの製品にも、また製品のどの部位にも、陰極電流密度が同じになるような工夫がなされています。
また時には、連続的に流れる直流によるめっきを止めて、断続的に大電流が流れるパルス電流によるめっきに変更するなどして、均一電着性の改善がはかられています。