(8)ベーキング処理に関する規格
(1)ISOの規格
ISOでは、鉄鋼上の電気亜鉛めっきの水素脆性除去の方法を、次のように規定しています。
発注者より要求があった場合、水素脆性による破損の危険を低減させるために、ある種の鋼に対しては、下記のような熱処理を施さなくてはならない。
また、引張強さが1500N/mm2(ないし相当する硬さ1)以上の鋼に対しては、通常の方法によって亜鉛の電気めっきを施すべきではない。1000N/mm2以上の引張強さの鋼は、この危険を最低に制御するためには、熱処理を施すことが必要であることに留意すべきである。
注)硬さ1:HRC45、HV440、HB415
■a. めっき前の応力除去
極度に冷間加工を受けた鉄鋼製品、焼戻し後、研削ないし、過酷な機械加工を施した1000N/mm2以上の引張強さ(ないしは、これに相当する硬さ2)を有する鋼よりなる品物に対しては、一般に応力除去の熱処理が必要である。注)硬さ2:HRC30、HV295、HB280
■b. めっき後の熱処理
使用時に疲労ないし静的荷重を受ける品物、および過酷な冷間加工により作られた品物に対しては、めっき後熱処理を施す必要がある。【表1】に示す熱処理条件の指針のとおり。
表面硬化材で作られた品物などで、この熱処理条件により害を受けるものに対しては、より低温、長時間の処理が必要である。
【表1】めっき後の鉄鋼部品の熱処理条件の指針
引張強さ (N/mm2) |
断面の最大厚さ (mm) |
190-210℃における熱処理時間 (h) |
1000〜1150 | 12以下 | 2以上 |
12〜25 | 4以上 | |
25以上 | 8以上 | |
1150〜1400 | 12以下 | 4以上 |
12〜25 | 12以上 | |
25〜40 | 24以上、めっき後16時間以内に熱処理を行う | |
40以上 | 実験により求める |
(2)JISの規格
JISでも参考値として【表2】のように、めっき前後の熱処理について規定しています。
【表2】応力除去のための熱処理条件
鋼の引張強さ(Mpa) | 温度(℃) | 処理時間(h) | |
めっき前 | めっき後 | ||
1000まで | - | - | - |
1051〜1450 | 190-220 | 1 | 8以上 |
1451〜1800 | 190-220 | 18 | 18以上 |
1800超 | 190-220 | 24 | 24以上 |