シアンや六価クロムは有害物質に指定されていますが、実際にどのように無害化処理が行われるのでしょうか。まず、シアンの処理からみてみましょう。
(1)シアン系常時排水の処理
次のようなアルカリ塩素法と呼ばれる方法が採用されています。これはシアン排水をアルカリ性にして塩素で炭酸ガスと窒素に分解するものです。この反応は、次の3段階で行います。
1. ↓ |
排水にアルカリを加えてアルカリ性にした後、次亜塩素酸ナトリウムなどの酸化剤を加えて、シアンをシアン酸にします。 NaCN + NaClO → NaCNO + NaCl |
2. ↓ |
弱い酸を加えてpHを8位にして、再び次亜塩素酸ナトリウムを加えて、シアン酸を炭酸ガスと窒素ガスに分解します。 2NaCNO+3NaClO+H2O→N2+3NaCl+2NaHCO3 |
3. ↓ |
シアンから分離した銅などの金属イオンはpHを調整して、金属の水酸化物の沈殿にして、沈降分離します。例えば銅イオンの場合には次のようになります。 Cu2++ 2OH- → Cu(OH)2 |
(2)濃厚廃液
老化しためっき液、めっき皮膜剥離液、排ガス洗浄液などのシアン系濃厚廃液は、自社工場で無害化処理を行わず、専門の処理業者に委託しています。業者は、高圧加水分解法、電解酸化法などで無害化処理した後、常法で完全な処理を行っています。
(3)事故
時々シアン濃度が水質基準を上回る事故が起きていますが、その殆どがシアン処理の工程が不完全であるのではなく、排水路の分別が不完全で、シアン系水路以外の水路に混入してしまったことなどに原因があるようです。