曲げの形状によっては、上下方向からの曲げでは金型の強度が不足し破損しやすくなるとか、加工が困難といった問題が発生することがよくあります。このようなときには、横(水平)方向から加工することを考えます。その実現手段としてよく使われる方法が、カム機構の利用です。
加工手段と金型の構造を説明しますと、【図1】は一般的なカムを利用したときの手順を示しています。まず通常の工法(L曲げ等)で加工し、問題部分をカム機構を利用して加工するようにします。
【図2】は、カムを利用した曲げの基本的な形を示しています。
カムは運動を伝えるカムドライバー(この場合は上下に動く部品)と、運動方向を変えて動くカム(この場合はパンチ、ダイに相当する部品)によって構成されます。カムの使い方の基本的な形が2つあります。
【図2】にカム1で示す形とカム2で示す形です。
カム1の形は一定量移動させることを目的とした時によく使われる形です。大きな力を発生させることは難しいのですが、一定量カムを移動させた後、カムドライバーのストロークの影響を受けない状態になります。この例では曲げダイを所定の位置まで加工前に移動させ、加工中はダイの位置を保持し、加工が完了した後はダイが後退して製品の取り出しが容易になるようにしています。
カム2は、カムドライバーとカムの斜面が大きな面積で接触して大きな力を伝えるとともに、カムドライバーの動きとカムの動きが連動していることが特徴です。この例では、曲げ加工するパンチの働きをしています。
以上が基本的なカムの使い方です。【図2】で2つのカムのタイミング関係を説明します。【図2】(a)は上型が下降し、ストリッパが材料を押さえたタイミングです。
次に、カム1が先行して働き、ダイを左方向へ移動します。移動が完了するとカムドライバーの平らな面がカム1に接触するようになり、以降はカム1は動きません。
カム1の動きが止まったタイミングに合わせて、カム2(パンチ)が曲げのために動き出します。【図2】(b)がその状態です。カム1は停止状態のまま、カム2が進行して曲げを完了します。【図2】(c)です
金型構造と各部の名称を【図3】に示します。
※ | 製品とカム1との関係は簡略化して表しています。 |