金型では調整などで微小な動きを必要とすることがあります。このようなときに使う機構の一つが、ここに示す差動ねじと呼ばれるものです。差動ねじは2つのねじのピッチの差を利用して、微小送りを実現するものです。
【図1】は、太いねじ(a)と細いねじ(b)が一体になった軸が本体部分に取り付けられ、細いねじ(b)にスライダが取り付けられた構造です。スライダは回転しないように取り付けられています。
ハンドルを1回転すると、ねじ(a)は矢印イの方向にピッチAだけ前進します。スライドも一緒に矢印イの方向に動いています。このとき、細いねじも1回転することで、スライドは矢印ロの方向にピッチBだけ動きます。ピッチAの動きに対して戻るような動きとなり、ピッチA>ピッチBの関係から、スライドはピッチAとピッチBの差分だけ矢印イの方向に動くことになります。具体的には、ピッチA=1.5mm、ピッチB=1.0mmとすれば、ねじ1回転でスライドは矢印イの方向に0.5mm動くことになります。
【図2】は、太いねじ(外ねじ)の内側に細いねじ(内ねじ)を持った軸と、細いねじを持ったスライド軸の組合せで作られた機構です。スライド軸は回転しないように回り止めの工夫をします。
ハンドルを1回転すると、外ねじは矢印イの方向にピッチA進みます。このとき、内ねじにねじ込まれているスライド軸も矢印イの方向に進みますが、周り止めされているために内ねじによって、スライド軸は矢印ロの方向にピッチBだけ動きます。ピッチAとピッチBの差分だけスライド軸は矢印ハの方向へ動きます。