金型を構成するプレートのねじ止めは問題が無いように思えますが、金型の組立やメンテナンスの際に作業がしずらいとのクレームが入ることがあります。
なぜかを考えてみます。【図1】で解説します。ねじ止めの標準といえる形が上型、下型共に(a)で示すものであろうと思います。小さな金型であれば上型、下型の分離や反転は容易に行えますから(a)の形で問題はありません。
金型が大きくなってくると、上型や下型の分離や反転が大変になります。ときには2人作業となることもあります。このような状態のときに、下型の止めねじが(a)の形だと反転して、ねじ締め作業を行うこととなります。このような状態で作業をしなければならないとき、作業がしづらいといわれることになります。そこで、(b)または(c)の止め方にすると、反転することなく作業ができるようになります。
上型は下型から分離したあと反転してパンチホルダを下にしておくことが多いので、やはり、(b)または(c)の止め方が作業がしやすくなります。この時、ストリッパプレートが可動式のものであると、(b)の止め方ではストリッパプレートを外してからでないと、ねじ締め作業ができないので、(c)の形がよい場合があります。
(c)のねじ止めでパンチバッキングプレートを止めるときには、パンチプレートとパンチバッキングプレートは(d)または(e)の止め方で、2枚のプレートを一体化するようにします。バッキングプレートと本体プレートの一体化は、ストリッパプレートやダイプレートでも同様です。ダイプレート等でバッキングプレートを外すことなく面を研削するような場合、(e)のねじの使い方だと研削作業が行いにくいことがあります。
ダイプレートの上に乗るガイドプレートのような部品のねじ止めでも、(f)または(g)の形となりますが、ストリッパプレート側の逃がしが面倒であったり、ときには逃がし忘れが発生したりします。プレートの厚さに問題が無ければ(f)のようにねじ頭部を沈めるようにする形がよいです。頭部の薄いねじ等もあるので工夫するとよいでしょう。
【図】を示して、このように説明すると当たり前のように聞こえますが、実際の金型では結構考えられることなく、止めねじが使われてることも多いように思います。金型構造の特徴をつかみ、作業しやすい止めねじの使い方を工夫することが必要です。ときにはこのために構造を変えることがあってもよいと思います。