切り曲げ加工は切り込み(スリットまたはランスとも呼ばれる)によって形状を作り、切り残した部分を曲げて【図1】(a)(b)のような形を作るのが目的です。切り曲げ形状の用途は、スプリングを引っ掛けるフックや可動部品のストッパーなどに使われることが比較的多いです。
切り曲げ加工は、1つのパンチで切ることと曲げを行います。【図2】を参照していただきながら説明しますと、パンチにはシャー角(k)を付けて材料を切る→(R部分で)曲げることに時間差を作ります。シャー角を付けないと、切る、曲げるが同時となるために曲げがうまくいかずに曲げ部で割れが生じます。シャー角はよいことの反面で問題もあります。パンチが最初に材料と接する部分がシャー角の尖った部分なので、チッピング(刃先が細かく欠けること)が起きやすいのです。パンチは角にしないでRとするようにします。
もう一つの問題が加工した製品の型離れです。【図1】(a)でw1、w2で示した寸法は、通常の製品図面では同じであることが多いですが、w1、w2が同じですと曲げた後、w部分はダイに接しているために抵抗が大きくなり、ダイから外れにくくなります。その対策として【図2】に示すようにw1<w2のテーパとします。このようにすることで、ダイからの製品の離れがよくなります。
切り曲げ加工を行う金型構造と各部の名称を【図3】に示します。基本構造は可動ストリッパ構造です。材料を押さえ、切り込みを入れ、そして曲げる工程を取ります。パンチは側圧を受けますから、ストリッパでパンチ先端をガイドするようにします。
多くの場合では、切り欠きだけの金型とすることは少なく、穴抜き型の中に組み入れて使うことが多いと思います(工程を短縮するため)。穴抜きと比較した時に、切り曲げパンチの方が早くメンテナンスを必要とする状態になります。寿命を延ばすためには、切り曲げパンチのみがきを実施するなどして、磨耗対策を取ることが必要です。