(1)金属溶射法
Metal sprayingといわれるこの方法は、ガスまたは電気により熔融した金属を、処理対象物に清浄な空気の力で吹き付けて被覆する方法です。溶射ガンを用いて、金属を比較的簡単に被覆させることができますので、大は瀬戸大橋のような巨大構築物から、入れ歯など義歯のような小物にいたるまで応用範囲の広い処理法です。
また、溶射する金属も、Zn、ALなどの低融点の金属ばかりでなく、ステンレス鋼、Ni合金などの高融点の金属も可能です。さらに、セラミックなど高硬度の材料を溶射すると、高い硬度の表面を得ることができ、高い耐磨耗性を発揮できます。
しかし、溶射法で得られた層は、多孔質でありますから、そのままでは耐食用として適当ではありません。再溶融するか、あるいは適当な封孔処理を施す必要があります。再溶融は、成膜した溶射層の表面をフレーム等で加熱して、もう一度、熔融させて、空隙を埋めることです。封孔処理法の一つに塗装があります。この場合には、表面の粗い多孔質の表面は、小さな穴の中に塗料が沁み込み、アンカーとなって塗膜の密着性を高めます。
鉄鋼構築物の防錆・防食対策としては、耐食性に優れた亜鉛、アルミニウム、Zn-AL合金などの溶射が利用されています。これらは、封孔処理して塗装下地として用いられます。溶射皮膜の厚さとしては、Zn皮膜は80、120、160、200μm、AL皮膜は120、160、200、300μm、Zn-AL合金皮膜では80、100、120μmの厚さが工業的に用いられています。
溶射方法は溶線式フレーム溶射が多く用いられていますが、一部ではアーク溶射も使用されています。