丸穴の抜き加工では、トラブルとしてかす上がりがあります。その対策の最も手っ取り早い方法が、上がってこようとする抜きかすを強制的に押し下げてしまうことです。この目的で作られたパンチが、【図1】に示しますジェクタパンチです。このパンチが使えればかす上がり対策には具合がよいのですが、パンチの再研磨ではジェクタピンが邪魔になります。分解してジェクタピンを外すのでは大変です。その対策として、パンチの横に穴があけられています。【図2】に示すように、ピンを押し下げた状態で横穴にピンを差し込むと、ジェクタピンは引っ込んだままとなり、研削が容易にできるようになります。
丸パンチを丸以外の形状加工に利用することがあります。パンチプレートの穴加工が容易にできるなどを目的とした使い方です。ところが丸以外の形状では方向性がでてくるので、【図3】に示すような回り止めが必要になります。回り止めの形を【図4】に示します。(c)の形は回り止めの基本と言えるものです。エンドミルで溝加工をして、その中にピンを入れ回り止めとします。ピンの扱いで調節ができます。(d)の形はエンドミルで直接回り止めを作るものです。穴の加工精度で回り止めの精度が決まります。回り止めを使った位置決めは簡単に見えますが、意外と難しいものです。
丸パンチの特殊な使い方として、ボールロックパンチがあります。パンチの着脱をワンタッチで行えるようにしたものです。パンチ側面に鋼球(ボール)が収まるような溝を持ったパンチです。
【図5】の(a)を参照して下さい。このパンチは【図5】(b)に示すような使い方をします。スプリング保持されたボールを内蔵した、リテーナーと呼ぶ専用ホルダを使い、パンチをセットします。パンチに引っ張り力が働くと、ボールがパンチのボール受け部の溝に食い込み、抜けを防止します。パンチの磨耗等でパンチを外すときには、リテーナーにある穴にピンを入れ、ボールを押し上げると、簡単に外すことができます。このような構造が工夫された背景は、自動車等の大きな部品の穴抜き加工で、穴抜きパンチの再研磨のために大きな金型をプレス機械からおろすことは大変なため、プレス機械に金型をつけた状態でパンチ交換ができるようにしたものです。