3回、4回と再絞り加工が進むと、絞り率を大きくしなければいけません。そうすると、絞り前と絞り後の径の差が小さくなるため、「再絞り上向き絞り型」で示した再絞り構造のしわ押さえが使えなくなります。しわ押さえ部分が薄く弱くなり、破損しやすくなるためです。このような絞り加工に用いる再絞り金型は【図1】に示すような構造となります。
加工前の製品を乗せるプレートは位置決めとしてのネスト(ブランクホルダ)、しわ押さえ及びストリッパの3つの機能を持っていますが、この段階の再絞り型になるとしわ押さえ機能はなくなります。ストリッピング機能と位置決め機能が役割となりますが、位置決め機能も十分とはいえなくなり、次のような工夫をします。
- ストリッパ面よりパンチの先端を少し出します。絞った後の製品がパンチに食いつかない程度の凸量です。
- ストリッパはキラーピンで先下げします。そのときにダイで製品を押さえないように、絞り前製品高さ(h)より、キラーピンの長さ(s)を少し長くします。
- ストリッパが先下げされることで、絞り前製品はパンチにかぶさるような形となります。安定した状態とはいえません。位置の修正はダイに接したときにダイRで自動的に調芯され、中心に行くようにします。このときダイの中にあるノックアウトで加工前製品を押さえ付けないようにノックアウト先端はダイ面より下げておきます。
この関係を示したものが【図2】です。
【図3】は、絞り過程を示したものです。
(a)キラーピンがストリッパ面に接した状態。絞り前の製品は拘束されずに自由に動く状態。
(b)絞り前製品がダイRに接して芯出しができた状態。
(c)絞りが始まった状態。ストリッパはパンチプレートに接し、キラーピンのスプリングがたわみ始める。
(d)絞りが完了した状態。ダイ面とストリッパ面で絞り製品のフランジが押さえられ、平坦が作られる。
(e)上型が離れ、絞りが完了している状態。絞りパンチは製品内径に食いついていない。
絞り加工では、加工の開始から下死点までと、戻り行程で加工製品がどのようになっているかを掴むことが、金型構造を設計する際に重要です。