産業用センサのカタログや技術資料に登場する専門用語38語を、カテゴリ別に解説します。センサ選定・配線・調整・トラブル対応の際の参考にできます。各用語はカテゴリごとにまとめています。
このページの目次
機能・特性用語
応答周波数(応答速度)
センサが1秒間に検出できる最大回数(Hz)。例えば応答周波数1,000Hzのセンサは1秒間に1,000回のON/OFFが可能。高速コンベアや回転体の検出には高い応答周波数が必要。カタログ記載値は通常「最小パルス幅(ON時間・OFF時間)」で確認する。
ヒステリシス
センサのON動作点とOFF動作点の差。ONとOFFの切替ポイントに意図的な差を設けることでチャタリング(頻繁なON/OFF繰り返し)を防ぐ機能。設定距離付近で対象物がわずかに振動する場合、ヒステリシスが大きいセンサを選ぶと安定した検出ができる。
しきい値(スレッショルド)
センサがONまたはOFFに切り替わるための信号レベルのこと。受光量・磁力・静電容量など検出量がこの値を基準に判定される。実際のON点とOFF点にはヒステリシスが設けられている場合がある。感度調整ダイヤルはこのしきい値を変更する操作に相当する。
チャタリング
センサのON/OFFが短時間に繰り返される現象。検出対象がしきい値付近にある場合や振動・外乱がある環境で発生しやすい。ヒステリシスを大きくするか、PLCタイマーでチャタリング除去(フィルタリング)をする。
相互干渉(クロストーク)
隣接して設置した複数のセンサが、互いの光・超音波・磁界などの検出信号の影響を受けて誤動作する現象。光電センサや超音波センサで発生しやすい。対策として投光タイミングをずらす(時分割駆動)か、センサ同士の距離・角度を変える。
出力・配線用語
2線式
電源供給と信号出力を2本のケーブル(茶・青)で行う配線方式。センサが直列に挿入され、ON時に電流が流れる。3線式より配線がシンプルだが、OFF時にも微小な漏れ電流(残留電流 0.5~2mA程度)が流れるため、PLCの入力しきい値との整合が必要。
3線式
電源(+)・GND・信号出力の3本のケーブルで動作する配線方式。産業用センサの標準的な配線形式(茶・青・黒)。2線式と比べて漏れ電流が小さく、PLCとの接続が安定している。
NPN出力(シンク出力)
センサ内部のNPNトランジスタがONになり、出力端子がGNDに接続される出力方式。外部回路から流れてくる電流をセンサ側へ引き込む(シンク)ため、「シンク出力」とも呼ばれる。日本国内やアジア系FAシステムで広く使用される。PLCに接続する場合は、入力コモン端子を+側に接続するプラスコモン入力(ソース入力タイプ)の入力ユニットと組み合わせる。
PNP出力(ソース出力)
センサ内部のPNPトランジスタがONになり、出力端子が+電源に接続される出力方式。外部回路へ電流を供給する(ソース)ため、「ソース出力」とも呼ばれる。欧米系FAシステムで広く使用される。PLCに接続する場合は、入力コモン端子をGND(0V)側に接続するマイナスコモン入力(シンク入力タイプ)の入力ユニットと組み合わせる。
プラスコモン入力(ソース入力)
PLC入力モジュールのCOM(コモン)端子を+電源側に接続する入力回路方式。プラスコモン入力(ソース入力タイプ)のPLCでは、+電源側からPLC入力回路を経由してNPN出力センサ側へ電流が流れるため、NPN出力(シンク出力)センサと組み合わせて使用する。
マイナスコモン入力(シンク入力)
PLC入力モジュールのCOM(コモン)端子をGND(0V)側に接続する入力回路方式。マイナスコモン入力(シンク入力タイプ)のPLCでは、PNP出力センサから供給された電流がPLC入力回路を経由してGND(0V)側へ流れるため、PNP出力(ソース出力)センサと組み合わせて使用する。
a接点(ノーマルオープン・NO)
通常時(非検出時)は回路が開いていてOFF、検出するとONして閉じる出力動作。センサの「検出時に出力ON」が代表例。NPN/PNP(電流の向き)とは別の軸で、出力の動作論理を表す。
b接点(ノーマルクローズ・NC)
通常時は回路が閉じていてON、検出するとOFFして開く出力動作。断線時もOFF側に倒れるため、安全回路・フェイルセーフ用途に用いられる。a接点(NO)と対になる。
デジタルセンサ
検出状態をON/OFFの2値デジタル信号で出力するセンサ。光電センサ・近接センサのほとんどがデジタル出力。PLCの入力モジュールに直接接続できるシンプルな構成が特徴。
アナログセンサ
検出量(距離・温度・圧力など)を連続した電圧値(0~10V等)または電流値(4~20mA等)で出力するセンサ。PLCのアナログ入力モジュールやA/Dコンバータに接続して数値として取り込む。変位センサ・圧力センサ・温度変換器などで一般的。
保護・環境用語
IP保護等級(IPコード)
IEC 60529に基づく固体異物(粉塵)と水の侵入に対する保護レベルを示す規格。「IP67」の場合、第1数字「6」=完全な防塵、第2数字「7」=水深1mに30分間没水しても影響なし。食品・洗浄ラインにはIP67/68、高圧洗浄にはIP69(IEC60529)/IP69K(ISO20653)が必要。
IP67
IP保護等級のひとつ。防塵性能が最高レベル(等級6)で、かつ水深1mの水中に30分間沈めても内部に浸水しない耐水性能(等級7)を持つ。産業用センサで最もよく見られる保護等級。
IP68
IP67より高い耐水性能。製造者が指定する条件(水深・時間)での長期水中使用が可能。製造者ごとに条件が異なるためカタログの詳細確認が必要。
IP69(IEC 60529)/IP69K(ISO 20653)
高温・高圧の水流(80℃・80~100bar・14~16L/min)に対する耐性を示す。食品製造・医薬品製造など高温・高圧洗浄が必要な環境で選定する保護等級。
シールドタイプ(埋め込み型)
近接センサの取付方法のひとつ。センサの側面に金属シールドを持ち、取付金具や金属パネルへの埋め込み(フラッシュ取付)が可能。感度は非シールドタイプより低くなるが、周囲金属の影響を受けにくく、規定条件内で金属部に埋め込んで取り付けられる。
非シールドタイプ(非埋め込み型)
近接センサの取付方法のひとつ。センサ前面だけでなく側面にも検出領域が広がるため、取付部分が金属の場合は所定のスペースを確保する必要がある。シールドタイプより検出距離が長い。
材質補正係数
近接センサ(誘導型)の定格動作距離は鉄を基準に規定される。アルミ・真鍮・ステンレス(SUS)などは導電率・透磁率が異なるため、実際の検出距離は公称値より短くなる。
検出距離・調整用語(主に誘導型・静電容量型近接センサ)
作動距離(検出距離)
センサが対象物を検出できる距離。カタログに記載される「定格動作距離(Sn)」は、標準検出物体を用いた規定条件下での基準値です。安定検出のため、実際の設定距離は定格動作距離の80%以下を目安にします。
設定距離
実際にセンサを設置する際の、センサ検出面から対象物までの距離。安定検出のため、通常は定格検出距離の約70~80%を目安に設定します。検出位置精度を重視する場合は、定格動作距離(Sn)の50~60%程度まで余裕を見ます。
実効動作距離(Sr)
個々の近接スイッチについて、定格電圧、周囲温度23±5℃、および規定の取付条件の下で測定した動作距離のことです。JIS C 8201-5-2では、誘導形および静電容量形近接スイッチの実効動作距離(Sr)は、定格動作距離(Sn)の90~110%の範囲内でなければならないと規定されています。
余裕度
センサの検出限界に対して、どれだけ余裕を持って使用しているかを示す考え方。近接センサでは設定距離、光電センサでは受光出力余裕度や過剰ゲインとして扱われる場合があります。
分解能
センサが識別できる最小の変化量(距離・寸法など)。値が小さいほど微小な差を検出できる。変位・測長や精密計測の用途では測定精度を左右する主要スペックで、要求精度に対して十分小さい分解能の機種を選定する。
光電センサ用語
BGS(背景抑制・Background Suppression)
設定距離より遠い背景(ワーク後ろの壁・コンベアベルト等)を無視し、設定距離以内の対象物を検出する機能。反射型光電センサに搭載。対象物と背景の距離差が小さい場合や、明るい背景が存在する環境で有効。
FGS(前景抑制・Foreground Suppression)
設定距離より近い前景物の影響を抑え、背景からの戻り光を利用して対象物を検出する機能。BGSと逆の考え方で、背景より手前にある物体によって光が遮られた変化を検出する。BGSで検出しにくい薄い黒色ワークや凹凸・光沢のあるワークに有効な場合がある。
偏光フィルタ
透明体(ガラス・フィルム)の検出に使用する光学フィルタ。発光部と受光部に偏光方向を制御するフィルタを設置し、回帰反射板からの戻り光の変化を利用して検出する仕組み。回帰反射型センサで透明体を安定して検出できる。
温度センサ用語
ゼーベック効果
異種金属を接続した回路の2接点に温度差があると起電力(熱起電力)が生じる現象。熱電対の動作原理。Kタイプ(クロメル-アルメル)/Jタイプ(鉄-コンスタンタン)/Tタイプ(銅-コンスタンタン)など素線の組合せで温度範囲・感度が異なる。
測温抵抗体(RTD)
温度変化による金属の抵抗値変化を利用した温度センサの総称。Resistance Temperature Detectorの略。産業用として最も普及しているのはPt100(白金、0℃での公称抵抗値が100Ω)。精度が高く-196~+600℃程度の幅広い範囲に対応。
サーミスタ(NTC型)
温度上昇とともに抵抗値が急激に減少する半導体素子。感度が高く小型化できるが、測定範囲が-50~+150℃程度と狭く、線形性も低い。精度要求が低い機器温度監視や温度補償に多用される。
サーミスタ(PTC型)
温度上昇とともに抵抗値が急激に増加するサーミスタ(Positive Temperature Coefficient)。モーターや変圧器の過熱保護に使用される。特定温度でスイッチング動作する「スイッチング型PTC」はモーター保護に広く使われる。
放射率(エミッシビティ)
物体が赤外線を放射する度合いを0~1の係数で表したもの(黒体=1.0)。赤外線温度センサで測定精度を確保するには対象物の放射率を正確に設定します。金属光沢面は放射率が低く、測定誤差が大きくなりやすい。
通信・ネットワーク用語
IO-Link
IEC 61131-9に標準化されたポイント・ツー・ポイントの産業用通信プロトコル。3線式ケーブル1本でデジタルデータ・パラメータ設定・診断情報の双方向通信が可能。専用ケーブル不要で汎用3線ケーブルが使用でき、センサの遠隔パラメータ変更や状態監視(スマートセンサ化)が実現できる。
フィールドバス
工場のフィールド機器(センサ・アクチュエータ)とコントローラを接続するデジタル通信ネットワークの総称。PROFIBUS・DeviceNet・CC-Link・EtherNet/IPなどの規格がある。1本の通信線で多数のデバイスを接続でき、配線量を削減できる。
スマートセンサ
IO-Linkやフィールドバスなどの産業用ネットワークに対応し、検出データに加えてセンサ状態・パラメータ・診断情報をデジタル通信で送受信できる高機能センサの総称。予知保全・ライン変更時の自動パラメータ設定・異常の早期検知に活用される。
よくある質問(FAQ)
センサのヒステリシスとは何ですか?
ヒステリシスはセンサのON動作点とOFF動作点の差です。ONとOFFの切替ポイントに意図的な差を設けることでチャタリング(頻繁なON/OFF繰り返し)を防ぎます。設定距離付近で対象物がわずかに振動する場合、ヒステリシスが大きいセンサを選ぶと安定した検出ができます。
IP保護等級(IPコード)とは何ですか?
IP保護等級はIEC 60529に基づく固体異物(粉塵)と水の侵入に対する保護レベルを示す規格です。「IP67」の場合、第1数字「6」=完全な防塵、第2数字「7」=水深1mに30分間没水しても影響なしを表します。食品・洗浄ラインにはIP67/68、高圧洗浄にはIP69/IP69Kを選定します。
NPN出力とPNP出力の違いは何ですか?
NPN出力(シンク出力)はセンサ内部のNPNトランジスタがONになり出力端子がGNDに接続される方式で、外部から電流を引き込むシンク形式です。日本・アジア系FAシステムで広く使用されます。PNP出力(ソース出力)はPNPトランジスタがONになり出力端子が+電源に接続される方式で、外部に電流を供給するソース形式です。欧米系FAシステムで広く使用されます。
作動距離(検出距離)とは何ですか?
作動距離(検出距離)とは、センサが対象物を検出できる距離のことです。カタログに記載される「定格動作距離(Sn)」は、標準検出物体を用いた規定条件下での基準値であり、実際の設置ではばらつきや環境変化を考慮して余裕を持たせます。
応答周波数とは何ですか?
応答周波数はセンサが1秒間に検出できる最大回数(Hz)です。応答周波数1,000Hzのセンサは1秒間に1,000回のON/OFFができます。高速コンベアや回転体の検出には高い応答周波数が必要です。カタログ記載値は通常「最小パルス幅(ON時間・OFF時間)」で確認します。