ガイドローラとは移動部品の案内に用いられ、転がり摩擦による小さい力で移動動作を得る機械要素部品である。
構造・用途・使用事例
構造
図1にガイドローラの外観を示しており、次の構造となっている。
図1.ガイドローラ外観
外周を構成するハウジング内に転がり軸受(ベアリング)が配置されている。
外周はハウジングと呼ばれ、その半径方向の断面の形は溝形状となっている。
ハウジングの溝形状は、平面、V、丸形状など複数の形がある。
内径の穴寸法、ハウジングの外径寸法、幅寸法に関して異なる製品が供給されている。
使用される材料は金属や樹脂が用いられている。
用途
移動する部品を支える案内として使用する。具体的にはハウジングと内輪の転がり動作で、ハウジングに接触した移動部品である板材、ワイヤー、線材の直線移動を得ることに使用する。
使用事例
ガイドローラの使用事例を図2に示す。部屋の引き戸のように移動部品にガイドローラを取り付けた場合と固定板にガイドローラを取りつけた2つの事例となっている。
図2.ガイドローラ使用事例
板の案内 | ガイドローラー ・移動板に固定 重力方向 ・紙面の下方向 |
|
ガイドローラー ・移動板に固定 重力方向 ・紙面の下方向 |
||
ロープ・線材の案内 | ガイドローラー ・ブロックに固定 重力方向 ・紙面の下方向 |
|
ガイドローラー ・固定板に固定 重力方向 ・紙面の下方向 |
選定のポイント
選定ポイントは下記の3点となる。
負荷荷重に見合うガイドローラサイズ
使用ベアリングの基本静定格荷重と基本動定格荷重を確認する。
表1.使用ベアリングの基本定格荷重参考値
形式 | 基本定格荷重 | |
---|---|---|
Cr(動)N | Cr(静)N | |
623ZZ | 630 | 218 |
625ZZ | 1730 | 670 |
626ZZ | 2340 | 885 |
628ZZ | 4000 | 1590 |
6000ZZ | 4550 | 1960 |
また負荷荷重をこの基本静定格荷重以下とする。
なお、負荷荷重の算出方法は下記、「負荷荷重算出法」を参照とする。
上記条件を満たしたベアリングを使用しているガイドローラを選定する。
表2.ガイドローラの参考カタログ値
負荷荷重と基本同定格荷重を用いてガイドローラの寿命を評価する。なおガイドローラの寿命算出は、「寿命」を参照とする。
ハウジング形状の決定
ガイドローラのハウジングの外周形状は、負荷の案内に合わせて、表3に示す中から選定する。
表3.ハウジング形状と取付軸
外形形状 | 取付形状 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
フラット | 両フランジ① | 両フランジ② | 片フランジ | 丸溝 | V溝 | テーパ | 軸なし | 軸付き |
取り付け部品の選定
ガイドローラを使用する際、その対象となる部品に取り付けて使用しなければ機能を果たさない。
そのため図3に示した取り付け具等がある。これらを用い移動部品をガイドローラに取り付けて使用する。
図3.ガイドローラーの取り付け部品
負荷荷重算出法
ガイドローラの負荷荷重は力の釣り合いから算出する。移動する部品の重心が、両ガイドローラの間にある場合とその外にある場合では、力の釣り合う式の形は変わるが、その考え方は同じで、支持する移動台の重量が重心位置に存在すると考えて、並進方向の力の釣り合いと重心周りの回転力の釣り合いの式を立てて解けばよい。ワイヤーのガイドとして使用する場合は、ガイドローラーに接触するワイヤーの張力を合成することで、ガイドローラーに加わる荷重が算出できる。また線材を案内する場合は、ガイドローラーで支える線材をガイドローラーの負荷荷重とする。この考え方は、「静的な幾何条件」の考え方で「解」であるベアリングに加わる力である負荷荷重を得ることが出来る。その負荷荷重の算出法を表4に示す。
表4.ガイドローラーに加わる負荷荷重の算出法
モデル | 計算方法 | |
---|---|---|
(事例1) 移動体の重心位置が両ガイドローラーの間にある場合 |
|
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(事例2) 移動体の重心位置が両ガイドローラーの外にある場合 |
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|
(事例3) 重りの力がロープに加わる |
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|
(事例4) 連続した線材のガイドローラーが受け持ち分の荷重の支持 |
|
寿命
ガイドローラの寿命計算について説明する。
使用されているベアリングの寿命計算と同様であり、各項目と計算式を下記に示す。
表5.ガイドローラの寿命計算の各項目
項目 | 内容 | 注記 |
---|---|---|
負荷荷重 | 上述のガイドローラに加わる負荷荷重の計算 ガイドローラの使用数量により移動部品の重量をガイドローラの負荷荷重に配分する。 |
重心がガイドローラの外部にある場合と、ガイドローラが固定板に取り付けられている場合では、移動板に加わる負荷荷重の位置が変化する。寿命計算に使用する負荷荷重は、「フェールセーフ*1」の考えの元、移動部品の位置によって変化する、負荷荷重の最大値を使用する。 |
ベアリングの 基本静定格荷重 |
カタログに記載の数値を使用する。 | - |
ベアリングの 基本動定格荷重 |
カタログに記載の数値を使用する。 | - |
負荷荷重の方向 | ガイドローラと移動板の取り付け方向によって「ラジアル負荷荷重」と「スラスト負荷荷重」に分けられる。 | - |
注釈
- *1
- フェールセーフとは問題が発生した際、安全側に移行する操作
寿命の総回転数の算出法について下記に示す
玉軸受:L=(C/P)3 × 106回転
- L:定格寿命
- C:基本動定格荷重 N(kgf)
- Cr:ラジアル軸受け
- Ca:スラスト軸受け
- P:動等価荷重 N(kgf)
- Pr:ラジアル軸受け
- Pa:スラスト軸受け
ベアリングの寿命は上記に示す様に経験知が含まれている実験式で算出される。ベアリングの型式で決まる基本動定格荷重とユーザーが設計した負荷の形状と使用法で決まる動等価荷重による数字で、ベアリングの破損が生じる総回転数を決める。この計算を行う際、ユーザーが決める動等価荷重は下記するように衝撃の種類によって補正係数を用いて荷重を求める。
荷重の種類による補正
荷重の種類によってその係数を掛けて軸受けに加わる動等価荷重を補正しなければならない。補正表を次の通り示す。
軸受に加わる動等価荷重=(補正係数)×(力の釣り合いにより算出される軸受けの負荷荷重)
表6.軸受けに加わる荷重の補正表
衝撃の種類 | 補正係数 | 機械事例 |
---|---|---|
ほとんど衝撃のない場合 | 1.0~1.2 | 電気機械、工作機械、計器類 |
軽い衝撃のある場合 | 1.2~1.5 | 車両、自動車、圧延機、金属機械、製紙機械、印刷機械、航空機、繊維機械、電装品、事務機械 |
強い衝撃のある場合 | 1.5~3.0 | 粉砕機、産業機械、建設機械、物揚機械 |
複合荷重である動等価荷重による補正
軸受けに加わる動等価荷重を算出する場合、直角座標系の基準である半径方向(ラジアル、r方向)と軸方向(アキシアル、a方向)に分解して支持する荷重を考えなければならない。この考え方を示す手段が「動等価ラジアル荷重」である。動等価ラジアル荷重は、次の式で示される。
Pr=XFr+YFa
- Pr:動等価ラジアル荷重(N(kgf))
- Fr:ラジアル荷重(N(kgf))
- Fa:アキシャル荷重(N(kgf))
- X:ラジアル荷重係数
- Y:アキシャル荷重係数
寿命計算例
ガイドローラの寿命計算は使用ベアリングの基本静定格荷重と基本動定格荷重の数値の範囲内であることが大前提である。また計算に必要な数値は下記と仮定する。
上記の条件の荷重が30kg(≒300N)と軸受に加わる荷重評価を係数「1」とする。
その場合に軸受に加わる荷重は(「1」 × 荷重=1 × 300=300N)となる。
従って軸受に加わる動等価荷重300Nは使用するベアリングの基本静定格荷重840Nの範囲内となる。
基本動定格荷重
軸受けの寿命評価は動作がないと計算できないため、荷重評価を係数「1.5」とする。
その場合に軸受に加わる荷重は(「1.5」 × 荷重=1.5 × 300=450N)
従って軸受に加わる動等価荷重450Nは使用するベアリングの基本動定格荷重2,260Nの範囲内となる。
寿命の総回転数にあてはめると下記となる。
L=(C/P)3 × 106=(2,260/450)3 × 106=127 × 106回転
以上から、寿命算出することができる。
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