カムフォロア、ローラフォロアとは移動部品の転がり案内に用いられ、二重円筒形状の内輪と外輪の相対運動を実現する機械要素部品である。
構造・用途・使用事例
構造
カムフォロア、ローラフォロアの外観と構造を図1に示している。
図1.カムフォロア、ローラフォロアの外観と構造図
外輪と取付軸又は内輪の間に配置された針状の転動体で外輪のころがり案内を実現している。軸付き製品をカムフォロア、穴の加工されたものをローラフォロアと呼んでいる。外径はフラット形状とクラウン形状がある。
用途
表1にカムフォロアの種類と用途について示す。
表1.カムフォロアの種類と用途
用途 | 一般 | |||||||||||
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特徴 | 六角穴付タイプ | ドライバ溝タイプ | ||||||||||
商品説明 | ||||||||||||
d3~10は、スタッド頭部に六角穴がついた「頭部六角穴付」、d12~20は、スタッド頭部とねじ部の両側に六角穴がついた「頭部ねじ部六角穴付」となります。六角レンチで簡単に取付けることができます。 | スタッド頭部にドライバ溝が付いたカムフォロアです。最もスタンダードなタイプです。 | |||||||||||
形状 | クラウンタイプ | フラットタイプ | クラウンタイプ | フラットタイプ | ||||||||
グリース | 一般 | 低発塵 | 重荷重 | 一般 | 低発塵 | 重荷重 | 一般 | 低発塵 | 一般 | 低発塵 | ||
選定基準 | 運動方向 | 直進運動 | ○ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ◎ |
揺動運動 | ◎ | ◎ | ◎ | △ | △ | △ | ◎ | ◎ | △ | △ | ||
回転数 | 低速回転 | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ◎ | ○ | |
高速回転 | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ◎ | ○ | ||
粉塵 | 低発塵 | ○ | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ◎ | |
荷重 | 軽荷重 | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ◎ | ○ | |
重荷重 | ○ | ○ | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ○ | ○ | ○ |
用途 | 小型 | |||||
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特徴 | 精密タイプ | 簡易タイプ | ||||
商品説明 | ||||||
外輪に極めて細かいニードルを組みこんだ小径カムフォロアです。電子部品装置・OA機器などに最適です。 | ボールベアリングを組合せたタイプです。軽荷重用の搬送、ガイド用途にご利用下さい。 | |||||
形状 | フラットタイプ | フラットタイプ | ||||
グリース | 一般 | 低発塵 | 重荷重 | 一般 | ||
選定基準 | 運動方向 | 直進運動 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
揺動運動 | △ | △ | △ | △ | ||
回転数 | 低速回転 | ◎ | ○ | ○ | ◎ | |
高速回転 | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ||
粉塵 | 低発塵 | ○ | ◎ | ○ | ○ | |
荷重 | 軽荷重 | ◎ | ○ | ○ | ◎ | |
重荷重 | △ | △ | ◎ | × |
用途 | 騒音防止 | |||||
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特徴 | 樹脂付タイプ | ウレタン付タイプ | ||||
商品説明 | ||||||
樹脂をカムフォロアに圧入したタイプです。樹脂が相手側の衝撃を吸収し、回転の際の騒音を抑える働きをします。 | ウレタンをカムフォロアに焼付けたタイプです。ウレタンが相手側の衝撃を吸収し、回転の際の騒音を抑える働きをします。 | |||||
形状 | Rタイプ | フラットタイプ | Rタイプ | フラットタイプ | ||
グリース | 一般 | 一般 | 一般 | 一般 | ||
選定基準 | 運動方向 | 直進運動 | ○ | ◎ | ○ | ◎ |
揺動運動 | ◎ | △ | ◎ | △ | ||
回転数 | 低速回転 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | |
高速回転 | × | × | △ | △ | ||
粉塵 | 低発塵 | ○ | ○ | ○ | ○ | |
荷重 | 軽荷重 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | |
重荷重 | △ | △ | ○ | ○ |
表2.ローラフォロアの種類と用途
用途 | 一般 | 騒音防止 | 固定ピン | |||||||
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特徴 | 分離タイプ | 非分離タイプ | ウレタン付タイプ | ローラフォロアピン | ||||||
商品説明 | ||||||||||
内輪、外輪、保持器に分離します。構造が簡単なため安価です。 | 内輪の両側に側板が圧入された非分離形のローラフォロアです。高荷重に対応した高荷重タイプ(クラウン)もご用意しております。 | ウレタンを非分離のローラフォロアに焼き付けたタイプです。ミスミオリジナル品です。ウレタンが相手側の衝撃を吸収し、回転の際の騒音を抑える働きをします。 | ミスミオリジナル品のローラフォロアピンです。ローラフォロアを固定する際にご利用下さい。 | |||||||
形状 | クラウン タイプ |
フラット タイプ |
クラウン タイプ |
高荷重 クラウンタイプ |
Rタイプ | フラット タイプ |
- | |||
グリース | 一般 | 低発塵 | 一般 | 低発塵 | 一般 | 一般 | 一般 | - | ||
選定基準 | 運動方向 | 直進運動 | ○ | ◎ | ○ | ○ | ○ | ○ | ◎ | - |
揺動運動 | ◎ | △ | ◎ | ○ | ○ | ◎ | △ | - | ||
回転数 | 低速回転 | ◎ | ○ | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ||
高速回転 | ○ | ◎ | ○ | ○ | ○ | × | × | |||
粉塵 | 低発塵 | ○ | ◎ | ○ | ◎ | ○ | × | × | ||
荷重 | 軽荷重 | ◎ | ○ | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ||
重荷重 | ○ | ○ | ○ | ○ | ◎ | × | × |
使用事例
図2に回転運動を直線運動に変換するカム(回転体)を用いた機構を示す。直線運動を取り出す部分にカムフォロアが使用されている。カムの回転に合わせてカムフォロアの外輪が回転し上下方向に移動することで直線運動を取り出す機構となっている。
図2.カムフォロアによる回転の直進変換機構
選定のポイント
荷重、回転数の選定
カムフォロア、ローラフォロアは負荷を支持して回転するので、負荷荷重を考慮して使用しなければならない。この荷重は、図3に示す基本静定格荷重と最大許容荷重をもとに選定する。
基本静定格荷重は回転していないときの針状ころにおける最大荷重を示し、最大許容荷重は支持構造が支えることが可能な最大荷重となる。選定する際、これら両方の基準内を満たす商品を選定しなければならない。
図3.基本定格荷重と限界回転数
寿命の選定
カムフォロア、ローラフォロアは使用されているベアリングの寿命によって総回転数が決まる。その算出法について下記に示す。
ニードルベアリング:L=(C/P)10/3 x 106 回転
- L
- :定格寿命
- C
- :基本動定格荷重(kgf)
- Cr
- :ラジアル軸受
- Ca
- :スラスト軸受
- p
- :動等価荷重N(kgf)
- Pr
- :ラジアル軸受
- Pa
- :スラスト軸受
ベアリングの寿命は上記に示す様に経験知が含まれている実験式で算出される。ベアリングの型式で決まる基本動定格荷重とユーザーが設計した負荷の形状と使用法で決まる動等価荷重による数字で、ベアリングの破損が生じる総回転数を決める。この計算を行う際、ユーザーが決める動等価荷重は下記するように衝撃の種類によって補正係数を用いて荷重を求める。荷重の種類によってその係数を掛けて軸受に加わる動等価荷重を補正しなければならない。補正係数を表3で示す。軸受に加わる動等価荷重=(補正係数)×(力の釣り合いにより算出される軸受の負荷荷重)
表3.軸受に加わる荷重の補正係数表
衝撃の種類 | 補正係数 | 機械事例 |
---|---|---|
ほとんど衝撃のない場合 | 1.0~1.2 | 電気機械、工作機械、計器類 |
軽い衝撃のある場合 | 1.2~1.5 | 鉄道車両、自動車、圧延機、金属機械、製紙機械、印刷機械、航空機、繊維機械、電装品、事務機械 |
強い衝撃のある場合 | 1.5~3.0 | 粉砕機、産業機械、建設機械、物揚機械 |
外径形状の選定
フラット形状の製品は図4で示される様に接触面が傾いた時に、カムの端面の角がその接触面と当たる現象が発生する。
図4.外径形状と接触面について
その際にクラウン形状の製品を使用すれば、接触箇所が片当たりとならないのでカムフォロアの正常な使い方となる。このようにクラウン形状は使用する幾何形状の誤差を許容することが出来る。接触面によって形状選定が重要となってくる。
取付構造の選定
図5に示す様にカムフォロアは中央部の軸の端部に加工されたねじにナットを使用して板材の穴に締め込んで固定する。ローラフォロアは中央部の穴に軸を通してローラフォロアをねじで固定する。
図5.取り付け法の選定
この事例はフランジ付きの軸を使用してローラフォロアを板材に固定する事例である。
参考
偏芯構造によるカムフォロア取付高さ調整構造
図6にローラフォロアの転がり外周面の高さの微調整を可能とする調整機構の構造図を示している。
図6.偏心軸構造による高さ調整
ローラフォロアを固定する軸とローラフォロアの内径を固定する軸を偏芯させ両部品を固定する。この時の偏芯量の倍の変位が高さ調整できる距離となっている。この軸を回転させることで、偏芯量により高さを調整することができる構造となっている。
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カムフォロア・ローラフォロア
カムフォロア・ローラフォロアを規格やブランドから選ぶ
カムフォロア | 材質から探す | 炭素鋼 ステンレス |
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種類から探す | 標準 偏心 簡易取付用 グリースニップル用取付タップ穴タイプ スラストボール入り |
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締結方式から探す | 頭部六角穴 頭部ネジ部六角穴付 ドライバー溝付 | |
ローラ種類から探す | 球面外輪 円筒外輪 | |
ローラ外周から探す | なし 樹脂付き ウレタン付き | |
ブランドから探す | 日本トムソン INA NTN THK JMC(ジェイ・エム・シー) McGILL ミスミ |
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ローラフォロア | 材質から探す | 炭素鋼 ステンレス |
種類から探す | 分離タイプ 非分離タイプ ウレタン付 | |
ローラ種類から探す | 球面外輪 円筒外輪 | |
ローラ外周から探す | なし ウレタン付き | |
ブランドから探す | 日本トムソン INA NTN THK McGILL ミスミ |