金属の洗浄
- (8)放射性トレーサー試験 人工汚れを作る際、放射性アイソトープ(放射性物質)を混ぜておき、洗浄後ガイガーカウンターで汚れの残渣を調べる方法で、スプレーパターン試験の1000倍、アトマイザー試験法の100倍の高感度であるとされています。 この方法は、非常に感度が高いので、各種の洗浄法の清浄度の比較や、他の方法では検出できないような微細な量の物質の検出に利用できる優れた方法です。しかし、現場では放射性物質の処理がむずかしく、一般的な方法とはいえません。 (9)発錆試験 電気めっきには、皮膜のピンホールを調べる有孔度試験がありますが、それと同じような試験方法であります。ろ紙に赤血塩と食塩の水溶液を沁み込ませたものを、鉄表面に付着させます。清浄化された面では、溶解した第2鉄塩イオンと指示薬の反応でプルシアンブルーの青色の沈殿を生じる現象を利用するものであって、感度は、水濡れによる方法の1/10程度といわれています。 また、過酸化水素2%、食塩0.008%の水溶液を金属表面に滴下して発錆を観察する方法もあります。タグ:
- (6)蛍光試験 この方法は、汚れに蛍光染料を加え、洗浄後、その残渣に紫外線を当てて蛍光を発光させ、写真または目視によって観察するものです。蛍光染料を含んだ油が蛍光を発する光の強さは、油の量に比例しますので、清浄な金属面での発光は、全くないので黒く写り、油が残存していれば発光し、その強さによって残存油の量を示します。 従って、蛍光染料の入っていない通常の汚れの検出には、この試験は適用できませんので、製品の清浄度を調べるというより、洗浄液の老化状態や洗浄工程が適切かなど、洗浄系の適否を判別するのに使われ、効果を発揮します。 通常、図1に示すような、ルミノグラフ写真装置を使って評価しています。この装置を使うと、洗浄前の油の付着量の平均0.113mg/cm2のものを洗浄して、肉眼で識別できる残油量は0.004mg/cm2であることが分かっております。
- (4)スプレーパターン試験 汚れたガラス表面に息を吹きかけることにより、清浄度を区分することから発展した方法で、冷清水を、塗装用ガンのような噴霧器で細かいミストにして、テストパネルに吹き付けます。吹き付ける距離は、表面での溢出を防ぐために、約60cm位がいいでしょう。汚れの残っている部分は、地図のように描かれ、一目瞭然と分かります。 勿論、この試験に用いる圧縮空気は、完全に油分、水分、埃などが除去されたものを用います。吹き付け後、乾かない程度に、テストパネルを傾けて余分な水分を取り除きます。これに要する時間は、経験的に、汚れのひどいものほど短く、清浄な面ほど長くかかるのが普通です。 この判定法の改良版に、箱の表面に100目の碁盤目の線を描いた透明なアクリル板を有する「覗き箱」を作り、スプレーしたテストパネルを箱内に立て、汚れの地図をマジックインキで手早く写しとり、清浄度何%(または洗浄度何%)と数値化できる方法があります。【図1】に、この方法でスケッチしたパターンを示します。タグ:
- これまで各種の洗浄方法について紹介してきましたが、今週は、どの位、清浄化されたかを示す、清浄度の試験法について述べることにします。 各種の洗浄方法によって洗浄された金属表面の洗浄度を評価する方法は、残念ながら現在でも適確なものがありません。これは要求される清浄度が、清浄化の次に行う表面処理によって異なるからです。 作業現場では、経験を基礎においた、水玉試験や水切り試験が行われていますが、原理が単純で、簡単に、短時間に行えるなど、極めて現場的な方法であるからです。現在各種の産業で行われている清浄度試験法としては、次のような方法が採用されています。 (1)目視試験: あらかじめ定めた基準と照合して、金属表面のシミ、酸化膜を目視で調べます。 (2)拭取り試験: ティッシュペーパー、ろ紙、白布などで、金属表面を拭いて、拭取った汚れの状態を調べます。単純な方法でありますが、他の試験で見逃す微粒子の検出に効果があります。 濡れた面と乾いた面では、濡れた面の場合のほうが微粒子汚れを検出し易いが、拭取りの際の圧力が重要で、酸洗いした後の冷延鋼板上のスマットと呼ばれる微粒子を検出するためには、強く拭取ることが必要です。タグ:
- さらに、生体のような半透膜を使った限外ろ過法や、逆浸透法の出現により、液体中の固形物ばかりでなく、液体中のコロイドやイオンの水との分離ができるようになりました。 【図1】に逆浸透法の原理を示しました。 半透膜(半浸透性膜の別称で、膜の細孔が非常に小さい膜)で仕切られた二つの槽の一方には食塩水、他方の槽には純水を入れておきますと、純水は膜を通じて食塩水の槽に侵入し、食塩水の濃度は薄くなります。これを浸透といいます。このときのエネルギーを浸透圧といい食塩水の濃度に依存します。もしこのとき両槽を隔てる膜の細孔の直径が食塩分子の直径より大きければ、食塩は純水側に移動し、やがて両槽の濃度は等しくなります。これは拡散といいます。 いま【図1】のように細孔の非常に小さい膜(半透膜)を用いて、食塩水に圧力をかけると食塩水中の水だけが水の槽に移動します。これを逆浸透と呼びます。タグ:
- 金属の洗浄工程において、洗浄用水の水質は極めて重要です。洗浄する製品がどのような用途に、どのような目的で使用されるかによって要求される清浄度は異なります。 電子機器、光学部品、半導体など精密洗浄が要求される分野では、洗浄用水中の極く微量の不純物の存在でも、製品の精度、歩留まりなどに影響するので、いかなる浮遊物、溶解物も問わない、限りなく純度の高い水が要求されます。これを超純水と呼んでいます。 その水質の一例は、電気抵抗率18MΩ・cm、微粒子(0.2μm以上)20ケ/mℓ以下、生菌0.2ケ/mℓ以下などであります。 超純水製造装置の一例を【図1】に示します。タグ:
- この洗浄方法は、有機・無機化学薬品による化学反応を利用して、金属材料の表面に付着している汚れを溶解して除去しようとするものです。 1)その対象となる汚れは、次のような酸やアルカリに可溶な汚れです。 (1)高温処理の結果生じる酸化スケール、 (2)金属表面処理の前処理としての除錆、 (3)溶接、はんだ付け、ロウ付け前後の洗浄、 (4)アルミニウム、マグネシウム、ステンレス鋼などの不動態化による皮膜除去、 (5)金属屑、バリとり、 (6)ボイラー、熱交換器などのスラッジ、硬水垢の除去など。 2)使われる酸や塩類 (1)酸類: 酸は酸化物、硫化物などに作用して水に可溶性な塩をつくります。硫酸、塩酸、硝酸、クロム酸などが使われます。このとき湿潤、発泡、腐食抑制の目的で界面活性剤を添加して使用されます。 (2)アルカリ: グルコン酸、クエン酸、チオグリコール酸塩、エチレンジアミンテトラアセテイト(EDTA)などの錯塩化剤を含むアルカリ除錆剤 また、アルミニウム、亜鉛などを溶解するアルカリ溶液(NaOHなど)タグ:
- 1)溶剤の種類 (1)脂肪族系炭化水素であるベンゼン、トルエン、ケロシンなどの石油系溶剤 (2)芳香族系炭化水素のコールタール系溶剤 (3)塩素化炭化水素、塩素化フッ素化炭化水素などトリクロールエチレンなどの不燃系溶剤 (4)ケトン、アルコール、フェノールなどの極性溶剤 (5)乳化溶剤、二相溶剤、エマルジョンクリーナーなど (6)その他 2)使用方法 (1)浸し(浸漬洗浄、溶剤を加熱して温液として使用する。) (2)浸しと機械的方法の併用(ワークの回転・振動や溶剤の流動など) (3)スプレー洗浄 (4)蒸気洗浄(溶剤を蒸気にすると汚れ溶解力は格段に向上する。ただし、蒸気回収装置が必要)【図1】に示しました。 (5)超音波洗浄(浸漬洗浄槽に発振子を設置して、洗浄液に振動を与える)タグ:
- 1)方法 機械的な表面清浄化の方法としては、次のようなものがあります。 (1)拭き取り(Wiping) 手作業または機械的に布やバフで拭き取る。 (2)研磨(Grinding)と機械加工(Machining) 砥石や砥粒のついた布または紙製のバフやベルトで研磨する。鋳物の鋳肌面を切削する。 (3)ブラスティング(Blasting) 珪砂、スチールグリット、ガラスピーズなどを、空気圧を利用して吹き付ける。あるいは羽根車を使って投射する(遠心投射)。 (4)ハイドロ・ブラスティング(Hydro blasting) アルミナ、シリコンカーバイトなどの粒子を水と混合して吹き付ける。(【図1】) (5)その他、タンブリングバレル、ワイヤブラシ回転など。タグ:
- 金属の洗浄 電気めっきをはじめ、塗装やコーティング、エッチングなどの表面処理を施すためにはその表面を清浄化する必要があります。一般的にはこれらの工程は、目的の表面処理に対して前処理と呼ばれています。 清浄化の目的は、素材表面に付着した油脂や、生成した酸化膜などの「汚れ」を「洗浄」によって除去して素地の地肌を露出させることです。この工程を確実に実施しないと、素地の上に生成させる各種の皮膜の密着性が低下するばかりでなく、皮膜そのものの物性も損なわれます。 また近年は、ナノテクノロジーの時代になり、超微細なパターン形成においてはナノメーター単位の汚れや表面の欠陥が不良の原因になりますので、これらの分野においては、従来の清浄化より一段と厳しい清浄度が求められます。タグ:
- 金属洗浄工程 金属洗浄のプロセスは、被洗浄物の材質や大きさ、汚れの程度や洗浄目的などによって異なりますが、一般には大体、次のようなものであります。 (1)機械的前処理 重度な汚れである赤錆やミルスケール、大気中での熱処理のスケールなどは、従来は酸によるピックリングで除去されていましたが、環境保全の立場から、ショットブラストなど水を使わない汚れ除去方法が採用されています。 表面処理後の仕上がりにヘヤーライン、梨地、艶消しなどが要求されるものは、表面処理の前にあらかじめその下地をつくっておきます。各種番手のエメリーバフやワイヤーバフによるヘヤーライン、サンド、グリッド、ガラスピーズによる梨地がつくられます。 これらの処理はいずれも油系汚れを嫌いますので、油汚れのある製品は、それを事前に取り除くことが必要であります。 (2)アルカリ脱脂 先に述べましたように油系汚れを除去するために、アルカリ性の水溶液に、界面活性剤やキレート剤などを加えた溶液に浸漬して40〜60℃に加熱、液の流動、製品の振動・揺動などを行って処理します。タグ:
- 金属イオン封鎖剤 水は、カルシウムCaやマグネシウムMgなどの金属イオンを含有しており、その量が多いと石鹸の泡立ちを妨害して洗浄効果を妨げることは、よく知られております。工業的な洗浄においても、これらのイオンはアルカリと反応して不溶性塩となるので有害であります。 これらの金属イオンを不活性にして洗浄効果を高めるものを金属イオン封鎖剤といいますが、次のようなものがあります。 (1)無機系イオン封鎖剤 各種重合燐酸塩系が主なもので、代表的なものとしてはトリポリ燐酸ソーダで、安価で、洗浄助剤として適当なアルカリ性をもち、CaやMgに対するイオン封鎖性が優れています。しかし、鉄イオンのような三価イオンに対する効果はあまりありません。重合燐酸塩のイオン封鎖剤を【表1】に示します。タグ:
- (5)乳化力 界面活性剤溶液は、液状の親油性汚れを、微細で安定な小液滴に乳化分散させます。界面活性剤の分子は、疎水基を油滴中に入れ吸着します。これによって生成する乳化物は、O/W型(水中油滴型)乳化物であります。【図1】(a)に示します。 これに対して、油性液中に水滴が乳化した場合には、W/O型(油中水滴型)乳化物になります。【図1】(b)(c)に示します。一般に、このような乳化物をエマルジョンと呼んでいます。 (6)懸濁力 固体の微粒子も、乳化と同様に、界面活性剤の吸着により水中で分散されます。この場合は、界面活性剤分子は、固体の表面に吸着しているに過ぎないので、乳化の場合に比べて安定性は劣ります。タグ:
- (2)界面吸着 分子状に溶解できずに過飽和になった活性剤分子は、親油基の水から離れようとする力と、親水基の水中に留まろうとする力のバランスする自由エネルギーの最小になる位置である水と空気、水と容器との界面に集合・吸着します。 (3)ミセルの形成 吸着すべき界面の得られない残り大部分の活性剤分子は、その不安定な自由エネルギーを最小にするために、親水基を水に向けた集合体ミセルを形成して溶存します。ミセルの形状には【図1】に示すように、球状、層状、棒状、小型ミセルなどがあります。 界面活性剤は、溶液中ではこのミセルの状態が大部分でありますから、微量の分子状のものと、微量の界面吸着したものの三つの状態で存在していると考えられます。 洗浄とは、汚れた金属製品が洗浄浴中に入り、浴中に、水-製品表面、水-汚れの新しい界面が出現することによって、それまで吸着すべき界面がなくてミセルの形で溶存していた活性剤分子がミセルを解いて、新しく出現した界面に吸着して、汚れを解離・分散し、自らが汚れに吸着することです。 また、分散した疎水性の汚れが液体の場合には乳化、固体の場合には懸濁の形で吸着が行われ、汚れ粒子は安定して浴中に保持されます。タグ:
- 水系の湿式金属洗浄においては、界面活性剤の存在なしではその効果は期待できません。酸洗い浴、アルカリ脱脂浴、活性化浴などに少量添加された界面活性剤は、金属表面に生成・付着した汚れに対して、浸透、吸着、乳化、懸濁、分散、発泡、表面張力低下などの作用をして洗浄効果を高めています。 つまり界面活性剤は、酸のように酸化皮膜を溶解したり、有機溶剤のように油脂を溶解除去する主役ではありませんが、それらの主反応が起き易い状態を作り出す黒子の役をしている訳です。 (1)界面活性剤の種類 (1)アニオン界面活性剤 石鹸が代表的なものですが、アルキルベンゼンスルフォン酸塩などの合成洗剤が用いられています。Na塩は、水溶液中では、アルキルベンゼンスルフォン酸がアニオン(マイナスイオン)に、Naがカチオン(プラスイオン)に電離して強い洗浄力を発揮します。 (2)カチオン界面活性剤 水中でカチオンになるもので、第一、第二、第三アミン塩系があります。タグ: