金属洗浄において、水は、酸やアルカリを溶解して、洗浄液として使用されるばかりでなく、その前後の「水洗」の洗浄水としても使われるので、その水質は、金属表面の清浄度を左右する極めて重要なファクターです。
(1)市水の不純物
一般には、洗浄水として市水(地表水、地下水)がそのまま使われることが多いのですが、市水には、【表1】に示すような多くの不純物を含んでいます。
【表1】市水の不純物
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(2)硬度成分
金属洗浄では、上記不純物のうち、Ca、Mg、Feなどが金属表面に多くの障害を与えます。水中に溶解しているこれらの塩は、石鹸や合成洗剤の洗浄力を不活性化するばかりでなく、その結果生成した難溶性または不溶性の塩類が、洗浄しようとする金属の表面に沈着して二次汚染を起こし、洗浄度を低下させます。
またFeは、水中では二価の塩類として溶存しますが、酸素によって容易に酸化し、不溶性の三価の鉄塩となり、これも洗浄物を汚染します。水道水は、酸化処理してあるのでFeは微量です。
通常、Ca、Mgの溶存量は「硬度」という指数で表現されています。溶存しているCa、Mgの塩類の全てを炭酸カルシウムCaCO3に等価換算し、水1リットル中のmg数(ppm)で表したものが硬度です。硬度の等級を【表2】に示します。
【表2】硬度の等級
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以上でお分かりのように、金属洗浄の仕上げ水洗では、市水を使うと乾燥後シミが発生するので、市水にイオン交換樹脂を使用して脱塩を行ない、脱塩水を使用しています。また、より高度の清浄度がもとめられる洗浄工程では、精密濾過、脱塩、脱ガス、殺菌などの高度処理された洗浄水を使用しています。