金属の洗浄
電気めっきをはじめ、塗装やコーティング、エッチングなどの表面処理を施すためにはその表面を清浄化する必要があります。一般的にはこれらの工程は、目的の表面処理に対して前処理と呼ばれています。
清浄化の目的は、素材表面に付着した油脂や、生成した酸化膜などの「汚れ」を「洗浄」によって除去して素地の地肌を露出させることです。この工程を確実に実施しないと、素地の上に生成させる各種の皮膜の密着性が低下するばかりでなく、皮膜そのものの物性も損なわれます。
また近年は、ナノテクノロジーの時代になり、超微細なパターン形成においてはナノメーター単位の汚れや表面の欠陥が不良の原因になりますので、これらの分野においては、従来の清浄化より一段と厳しい清浄度が求められます。
なお、「汚れ」の種類については、本シリーズ(「金属表面の汚れ-1」、「金属表面の汚れ-2」)で説明しています。
洗浄方法
洗浄とは、素地の表面に付着している汚れや不用なものを除去する工程であり、汚染物質の種類や清浄化の目的によって、次のような方法が採用されています。
1)洗浄剤による除去
洗浄剤により、表面に対して汚れよりも大きな親和性のある界面活性剤の作用によって汚れを置換し、浮き上がらせて除去します。
2)機械的除去
拭き取り、ブラッシング、あるいは、機械加工などにより、素材表面の一部を切削して除去します。
3)溶剤による除去
水溶性の汚れは、水で、油性の汚れは、アルコールなどの溶剤で溶解除去します。
4)化学反応により除去
化学薬品により、汚れを可溶性なものに変えて除去します。
以上のような方法を単独または重複して洗浄しますが、いろいろな場合において許される残渣がどの位までならよいかという目標の清浄の度合いが、経済性や技術的難度を決定するといってよいでしょう。従って、金属表面に付着している物質のすべてを除去するという完全な清浄化というのは工業的には現実的ではありません。有害な影響がなく、どの程度の汚れまでなら許されるかを知ることが必要であります。
このためには、洗浄度の評価が洗浄工程には不可欠です。しかし、これがなかなか難しいのです。