(3)犠牲陽極方式と外部電源方式の比較
外部電源方式の利点は、(1)電圧や電流を自由に調節することができる。(2)従って、腐食条件の変化に対応できる。(3)陽極の不溶性が十分であれば、半ば永久的な施工ができる。(4)従って、費用が安くあがる、などです。
これに対して犠牲陽極方式は、(1)施工が簡単で、ある期間は管理が不要である。(2)電源が得られない場所や小型の装置などに適用でき、経済的であること、などです。
外部電源方式の欠点は、(1)電流調節の手間がかかる(自動調節にすれば費用がかかる)。(2)陽極の不溶性や強度が十分でないと破壊して通電しなくなる。(3)投下資本が大きい、などです。
犠牲陽極方式の欠点は、(1)環境と陽極の配置が適正でないと十分な防食ができない。(2)長期間防食効果を保つことが困難で、通常数年程度で陽極の取替えが必要である、などです。
(2)アノード防食適用の問題点
カソード防食を実際に適用しようとすると、次のような問題があります。
(1)防食に必要な電流値
防食に必要な電流の大きさは、環境により腐食条件により変化します。例えば、淡水と海水では、淡水の電気抵抗率は海水に比べて100倍以上も大きいです。防食に必要な電流の値は、拡散してくる酸素の量によりきまり、その量は淡水でも海水でもそうは変わらないので、所用電気量は変わらないのに、淡水は電気抵抗が大きいため印加電圧を高くしなければなりません。土中の場合も同様です。
また、水流速のある状態では、分極は起こりにくくなるので、海水中での防食の場合、必要な防食電流は、流速に比例して増大します。
(2)過防食
防食に必要以上にカソード分極させることは、電力の浪費になるばかりでなく、いろいろな障害を引き起こします。カソード分極により発生する水素により、鋼のように水素を吸蔵して脆化するものは、過防食は、水素割れを起す原因になります。
またカソードにおけるpHの上昇により、両性金属では腐食が起きます。
(3)管内部の防食
管内部のように電流の流れが制限される場合には、防食可能距離が減少するので、それに対応した電極の配置が必要です。管内のカソード分極による析出物が付着したりすれば腐食は広がります。
(4)隣接金属体に対する障害
目的物をカソード分極するために電場を与えると、隣接の金属体に電食を生じることがあります。海水中よりも土中のように抵抗率の高い環境のときに問題になります。地中にはどのような埋設物があるかよく分かりませんので、よく調査してから施工する必要があります。