(3)アノード防食法
アノード分極によって金属体を不動態化させて防食する方法であります。不動態化電位が低く、しかも不動態化保持電流が、比較的小さいステンレス鋼で、まず採用されました。
その後、Ti、Ni合金から今日では、鋼にまで及んでいます。
アノード防食を採用するに当って問題となるのは、次の3点です。
(1)所要最大電流
活性状態の金属を不動態化するために越さなければならない電流の山があまり高いと、初期だけに電流容量の大きな電源を必要とします。これは不経済です。しかし、不動態化を早く起すのに大電流が必要であっても、ゆっくり不動態化するのであれば、電流値は小さくてすみます。
(2)不動態化電位範囲
不動態化の電位範囲があまり狭いと、アノード防食の適用は困難となり、活性態あるいは過不動態域に逸脱する確率が大きくなるので、最低50mv以上は必要とされています。
(3)不動態化維持電流値
不動態を維持するためには、ある大きさの電流が必要です。この値が大きいことは、不動態状態での腐食速度の大きいことを意味し、また経済的にも電力費が高くつくことになります。 67%H2SO4、24℃での各種金属の不動態維持電流は、【表1】のようで、例えば1m×1m×2mのタンクの内面を防食するのに必要な電流は、ステンレス鋼なら0.1〜0.2A程度、軟鋼なら0.9Aくらいですみます。 不動態維持電流は、温度の上昇あるいは、環境の腐食性の増加とともに、増加します。
【表1】不動態維持電流値
|