表面処理工程では、次のような分野に熱需要があります。
(1)加熱
(1)溶液の加熱
電気めっきなど湿式処理(水溶液による表面処理や水洗工程を伴う処理)では、化学反応を促進するために溶液の加熱を行い、適切な温度に維持します。例えばめっき浴、脱脂浴、電解洗浄浴などは40〜60℃に維持して作業されます。また、アルミニウム合金の陽極酸化処理の封孔処理では、沸騰状態の水が使われています。
これらの熱源は、小規模の場合には投げ込み式電熱器が使われますが、規模が大きくなるとボイラーで発生した蒸気を使用しています。ボイラーの熱源は、灯油、重油、プロパンガス、都市ガス、その他です。
加熱方法は、電熱器の場合は石英・ステンレス・チタン製などの保護管を使用して、ニクロム線の発熱部を浴中に投入します。蒸気の場合には、ステンレス・チタン・タンタル製などの加熱管や熱交換器を用いて間接加熱が行われ、放熱した後の蒸気は凝縮水(ドレン)になり、回収されてボイラーへ給水されます。
これらに対する省熱対策としては、できるだけ作業温度の低い処理浴への切り替え、めっき槽などの槽璧や液面保温による熱損失の防止が行われています。ミスト防止剤を使用して局所排気をなくすることも、重要な省熱対策の一つです。
(2)乾燥・焼付などのための加熱
めっき製品の乾燥には50〜60℃の熱風が、塗装の焼付乾燥には、120〜250℃の熱風や赤外線や遠赤外線が用いられ、これらは電力やプロパンガス、都市ガスなどで供給されています。
その他、イオンプレーティングやCVDなどの乾式処理(ドライプロセス)における加熱には、専ら電力が用いられています。
(2)冷却
硬質クロムめっきや亜鉛めっきなど、陰極電流効率の低いめっき浴では、作業の進行に伴って浴温が上昇します。これは、浴中を電子電流が流れ、ジュール熱が発生するためです。浴温を所定温度に維持しないと一定の品質が維持できませんので、浴の冷却を行います。
常温に近い浴温の処理液では、冷媒の圧縮膨張による機械式の冷凍機が用いられていますが、冷媒で直接処理液を冷却する方法よりも、冷凍機で一旦冷却水をくつり、それで処理浴を冷却する間接的な冷却法が採用されています。
クロムめっき浴のように50〜60℃のものは、クーリングタワーのような大気蒸発装置を使って、蒸発潜熱によるめっき液の冷却が行われています。