一口に表面処理といっても、長尺物のサッシュやパネルを陽極酸化処理する工場と、電子部品の金めっきなどを行う工場では、電力エネルギーの原単位には大きな相違があるし、また電気めっき工場と塗装工場では、使用するエネルギー源が異なり、前者が電力であるのに対し、後者は熱であります。
また、電力の用途をみても、金属の還元反応や酸化反応に使用される直流電源(交流の場合もある)が大半を占めるものもありますが、作業環境整備のための排風機や温度調節に大半は使われる工場もあり、一概に、表面処理工場のエネルギー消費構造は、こうであると言い切ることはできません。
一例として、電気めっきのなかで一番電流効率の低い例として、クロムめっきの工場の電力消費効率を【図1】にあげることにしましょう。
これは、3相6600Vの高圧電力を受電する「高圧電力AまたはB契約」の工場でありますが、受変電トランス、整流器、めっき槽などや、配線で電力損失があります。なかでもクロムめっき槽における電力損失は甚大で、仕事に使われる(クロムが金属化される)電力よりも、熱になる損失電力の方がはるかに大きいものです。
いま、電気設備の効率を受変電トランス97%、整流器80%、クロムめっきの電流効率10%、交流・直流配線の効率を98%として、総合的な効率を計算すると、次のようになります。
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すなわち、この工場のクロムめっき工程での電力は、7.6%しか有効に使われていないことになります。損失電力の殆どは熱になりますので、クロムめっき槽では浴温度が上昇します。これを冷却するのに、また別の電力が必要になるという悪循環になります。
この工場での省エネルギー対策の第一は、クロムめっきの電流効率を高めることでありますが、なかなか良いものがありません。フッ化浴を用いても電流効率は20%位です。
このような低電流効率は、陽極酸化(アルマイト)処理でも同様で、大半がジュール熱となって浴温を上昇させますので、大型の冷凍機を使って冷却をしています。これらのようにジュール熱の発生が避けられないものとするならば、この熱を他に有効に使うことを考えたほうが良策です。