(1)単層めっき
防食めっきは、その殆どが単層めっきです。亜鉛めっきや亜鉛合金めっきが広く使われていますが、その理由は犠牲防食の原理から当然のことで、亜鉛などイオン化傾向の大きな金属がイオン化傾向の小さい鉄鋼と直接電気的に接続される必要があるためです。
近年は、防食めっき皮膜の耐食性を更に高めるために、めっき後の後処理としてクロメート処理が行なわれ、例えば亜鉛めっきにおいては亜鉛の白錆び発生を防いでいます。
また、機能めっきでも、硬質(工業用)クロムめっきや印刷ロール用銅めっきなども単層めっきです。これらは要求特性をもつめっき皮膜だけが必要であるからです。
(2)多層めっき
耐食性も要求される装飾めっきの殆どは「多層めっき」です。一口に装飾めっきといっても、その求められる皮膜の特性は用途に応じて様々です。 例えば、自転車のハンドルにはクロムめっきが施されます。めっき皮膜の最上部には耐磨耗性に優れたクロムめっきが、その下部には耐食性に優れ、比較的硬度の高いニッケルめっきが施され、表面が硬くて傷がつかず、錆びにくくて美しいハンドルになります。 また宝飾品のブローチなどは、造形の容易さから鉛合金のラバーキャスト鋳造や亜鉛ダイカストの素地が用いられますが、亜鉛や鉛合金と密着性のよい銅めっきが最初に施され、次に耐食性向上のためにニッケルめっきが施されます。最上層には商品価値を高めるために金・プラチナ・ロジウムめっきなどが施されます。 このように装飾めっきは、めっき層を異なった金属めっきで多層化することによって、製品の要求する特性を満足させているのです。 また、この場合コストを下げるために、ニッケルめっきを省略して、銅めっきを厚くすることも可能ですが、銅の上に金めっきを施すと、やがて金めっき皮膜が下地の銅に拡散して金めっきは消失してしまいます。このように金属の組み合わせによっては、拡散や浸透が起きるので、多層めっきの設計には、その対策も必要です。 |
このように、めっき皮膜の構造設計は、その製品の使用環境、要求される特性、金属の性質、コストなどを考慮して決定されます。