表面処理工場には、いろいろな法規制が適用されています。例えば、有害物質を発生または飛散させる工程では、飛散物質を補足する局所排気やミスト防止剤の使用などの対策が労働安全衛生上要求されます。捕捉された物質はめっき液として工程内で再利用したり、使用不能の場合には廃液になります。また、ミストやガスは排ガス洗浄塔で水に吸収されて濃厚廃液となります。これら廃液はいずれも排水処理の対象になります。
工場から最も多量に発生する排水は、水洗工程で発生する常時排水です。これは、めっきなどの1工程が終了する毎に、その工程の付着液を洗浄するための排水で、この排水をいかに節水するかが各社腕の見せどころです。
節水の方法としては、各工程が終了した時点で「液切れ時間」を設定して、液のくみ出しを減少させたり、入浴水洗を止めてシャワーにしたり、水洗槽への連続通水を止めて、回分式水洗(バッチ水洗)にするとか、あるいは、水洗効果を高めるために、製品の流れと洗浄水の流れを逆向きにした向流多段水洗という方法などを採用しています。この場合の水洗槽の段数としては、2〜3槽が普通のようです。このような水洗槽からの排水である常時排水が、酸化・還元・中和など化学処理の系統別に排出されます。
各種法令よる水質基準を守るための工場排水処理の基本として、次のことが考えられます。
1. | 工程内で、規制物質を使用しない。代替法を考えます。 | |
2. | 代替法がない場合には、確実に無害化処理するために、規制物質別の系統に排水路を分別します。例えば、シアン系、クロム系、酸アルカリ系というように。これらが少しでも混合しないように厳密に分別します。 | |
3. | 可能であれば、工程内で処理します。例えば還元処理を必要とするクロム酸などは、水洗工程中に処理すれば洗浄性は高まります。イオン交換樹脂で除去することも行われます。この場合、大幅な節水効果が期待できます。 | |
4. | .濃厚な廃液は、別途に処理します。濃厚液は電導性が高いので、電解による金属の還元回収、電解酸化処理など自家処理するか、専門の業者に処理・処分を委託します。 | |
5. | 中濃度の廃液は、一旦専用貯槽に貯えたのち、その系統の排水路に少しずつ注入して処理します。排ガス洗浄廃液などは、比較的低濃度であるこの方法が適してします。一度に流すと処理能力をオーバーする危険があります。 |